【「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」レビュー(ネタバレ)】戦国死にゲー。剣戟アクションの最高傑作。

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総合評価
( 5 )

2019年3月22日、フロムソフトウェアから「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」が発売された。

Bloodborne(ブラッドボーン)の魅力に取り憑かれた事でこれまで避けていた死にゲーの魅力にハマってしまった俺は、次の死にゲーを求めてダクソ廃人の友人におすすめを聞いたところこのゲームを紹介された。

どうやら友人曰くめちゃめちゃ難しいとのこと。加えてこのゲームは2019年度Game of The Yearを受賞していて、世界からの評価もかなり高い。これはもうプレイしない訳にはいかないと思いAmazonで即購入。

結果ハマりにハマり合計100時間プレイ&トココンまでしてしまった。

そして結論から言うと2023年現在、このゲームに勝る剣戟アクションゲームは存在しないと言っていい。

では今回は今作が間違いなく傑作であると言えるその理由を説明していきたい。

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この記事の目次

神話混じりの戦国ファンタジー

SEKIRO(株)フロムソフトウェア

これまでダークソウルやブラッドボーンが洋風だったのに対してSEKIROの舞台は日本。ゲーム内の風景には桜、すすき、紅葉、雪といった四季が取り入れられ、日本らしい風景が見事に再現されている

物語の舞台となるのは葦名(あしな)という架空の国。この地に古くから伝わる竜胤(りゅういん)と呼ばれる不死の力を巡って物語が展開していく。

戦国ものに神話やファンタジーといった神秘的な要素を織り交ぜて作られた世界観で、日本人にとってはどこか懐かしく親しみを感じやすいものとなっている。

フロムにしては分かりやすいストーリー

戦国時代末期。雪深い山々に囲まれた葦名の国。

その戦場跡で拾われた一人の孤児に与えられた名は「狼」本作の主人公だ。

それから20数年後。存亡の危機にあった葦名の将である葦名弦一郎は、古くからこの地に伝わる不死の力「竜胤」を葦名の復興に利用しようとしていた。

しかし竜胤を宿す御子である九郎は、竜胤は人の生を歪める忌むべきものと考えているため弦一郎への協力を拒む。その後は葦名の城に幽閉されてしまうが、唯一の家臣である狼の助けを得て城を脱出することに成功する。

しかし城の出口では御子を連れ戻すために弦一郎が待ち構えており、狼は善戦したものの左腕を切り落とされ敗北。

主を拐われてしまい命尽きたかと思われたが、荒れ寺の仏師の気まぐれに助けられ、左手には彼が過去に使用していたという絡繰りの義手を授かる。

かくして彼は隻腕の狼「隻狼(せきろ)」となった。

『命を賭して守り、奪われたら必ず取り戻せ』

忍びの掟に従い雪辱を果たすため、そして主である御子を奪還するため一人戦う。

ここまでが序盤までのあらすじだけど、過去の作品と比べて主人公の目的や動機、ストーリーが圧倒的にわかりやすいため、プレイヤーは目的を見失うことなく進んでいける。

それでも竜胤はなぜ存在するのか、変若水とは何なのか、不死斬りはなぜ存在するのかなど、細かい設定について詳しく語られないのはフロム特有といったところ。だけどこうした謎を残す描き方が、どこか神秘的な要素を孕んだこの世界への興味を引き立てていて、数々の考察が生まれている。

物語後半、復讐を果たし主を取り戻した狼は、御子本人から自分を殺してほしいと頼まれる。

九郎は人の生を歪める竜胤を断ち切るため、不死である自分を殺してほしいというのだ。守るべき主を殺すという願いを狼は一度断ったものの、自分の為に何度も死を繰り返す狼を解放したいという彼の確固たる意思を受け取り、その願いを叶えるため奮闘する。

やりがいのあるマルチエンディング

今作もダークソウル、ブラッドボーンに引き続きマルチエンディングを採用している。

前作ブラッドボーンではその結末の全てに「?」が付いてしまうようなものばかりで戸惑いが隠せなかったうえ「これならどのエンディングでも同じだろ」と思ってしまう自分がいた。

しかしSEKIROのエンディングはいずれもプレイヤーの選択がそのまま反映されるため、自分の行動とその結末に説得力があってとても分かりやすい。

ただそのルート分岐が入手方法のわかりづらいアイテムが必要だったり、特定の会話を盗み聞きしないと発生しないイベントだったりとやや複雑で、多くの初見プレイヤーはノーマルエンドにたどり着くと思う。初見はもちろん攻略サイトを利用しないと他のルートに入るのはかなり難しい。

緊張感の高い剣戟アクション

SEKIRO(株)フロムソフトウェア

SEKIROを名作たらしめる最大のポイントは緊張感の高い戦闘システムだ。これまでの作品は敵の攻撃を回避する事が重要だったけど、今作では敵の攻撃を弾く事に重きを置いている。

ざっくり言うと「敵の攻撃をすんでのところで弾いて、体幹が崩れた一瞬の隙を突いて倒す」というもので、どちらかといえば自分が攻めるよりも敵の攻撃を受ける時間の方が多いし、その方が有利な場面が多い。

だから今作は自発的な攻撃よりも弾きが何よりも重要なんだ。

防御こそが最大の攻撃

敵の攻撃はL1でガードできるけどそれだけでは旨味はないし、むしろ自分の体幹ゲージを削られて不利になってしまう。

これをジャストタイミングでガードすることで弾きが成功し、火花のようなエフェクトが発生して敵の頭上のオレンジ色の体幹ゲージが増加する。

この体幹ゲージは時間と共に減少していくから、敵の攻撃を弾いたらすかさずこちらも攻撃して、敵に休む暇を与えない事が大事。攻撃の手を止めないという点ではブラッドボーン以上にアグレッシブな戦闘システムといえる。

体幹ゲージが最大になると姿勢を崩し、隙が生まれたことを示す赤いマーカーが現れる。

その隙を逃さず攻撃ボタンを押せば「忍殺」が発動し、敵の残りのHPに関わらず一撃で倒すことができる。

この弾きと忍殺のSEが非常に気持ちがよく、何よりも緊張と緩和による快感が神がかり的で、こんなにも戦うことが快感に満ちたゲームを俺は他に知らない。

モブならまだしも強敵のHPを削り切るのは現実的ではないから、どにかく攻撃を弾いて体幹ゲージを貯めるのが基本戦術。このようなシステム上どんなに強い相手でもこちらが退けば不利になるため、勝つためには常に前のめりの姿勢を求めらる。

忍者の基本はステルス

とはいえ一対多数となると苦戦するのは避けられない。調子に乗って突っ込んで右から左からタコ殴りにされて死ぬのはよくある話。

そんな時は忍びらしく物陰に隠れて背後や頭上から忍殺(ステルスキル)を決めればいい。わざと敵の視界に少しだけ入っておびき寄せたりと、剣戟アクションである一方でステルスも楽しめる側面も持っているのはとても懐が深い。

完全な実力勝負

武器は刀のみ

SEKIRO(株)フロムソフトウェア

両手剣や槍や斧といった多種多様な武器があるソウルシリーズやブラッドボーンと違いSEKIROの武器は刀一本のみ。自分の得意な武器を担いで戦う前作までとは大きく異なっている。

武器が一つしかないためプレイヤー毎のプレイスタイルや立ち回りの差異がそこまで大きくなく、いかに敵の動きを覚えて対処していくかがこれまでよりも更に大事になっている。

いわゆる強武器に頼れないためプレイヤーは自身の成長や上達を感じやすく、これが一層大きな達成感を生み出している。

スタイリッシュな流派技

通常攻撃のほかに抜刀術や蹴り技などさまざまなアクションがある。しかし、それを使わなくても勝てるゲームシステムのため、ぶっちゃけそこまで強くなかったり、なかには無くてもいいとも思うものもある。技ごとのパワーバランスが極端で、いつ使えばいいのか全く分からないものや、わざわざ使う必要がない技もある。

【秘伝、一心】神速の抜刀術から無数の剣閃を生み出して攻撃する技。わざわざ使うタイミングはほぼ無いが、ただひたすらにカッコいい。それに尽きる。

そもそもこのゲームは敵の動きを覚えて立ち回るのが基本のため、この技さえあれば勝てる!というものが存在しない。スタイリッシュでカッコよく魅せプができる。流派技の価値はそこにある。

多彩な義手忍具

手裏剣はもちろん斧、槍、火炎放射までより取り見取り。これを敵によって使い分けることで斧で盾をかち割ったり、手裏剣で空中の敵を撃ち落としたりと、敵や状況に合わせて使い分けていくことで戦闘を有利に進めることができる。

形代というポイントを使用して使うため限りはあるが刺さる相手にはとことん刺さるため、使うタイミングを見極めていくのが上達と勝利の近道。

レベルアップは存在しない

今作に一般的な経験値という概念は存在しない。代わりに雑魚敵を倒すとアイテムを買ったり義手忍具の強化に必要なお金と、流派技や有用なスキルを習得できるスキル経験値を得られる。

スキルを習得すれば敵の強力な突き攻撃を無力化できたり、敵に発見されにくくなったり忍殺するとHPが回復したりと、より戦いやすくすることができる。

狼のステータス(HP)を上げるためには数珠玉というアイテムが必要で、これを4つ集めなければならない。ゲーム内に40個存在するがその多くはボスが持っているため、ボスを倒すためにレベル上げをしてステータスを盛るという対策を取ることができない。

結論、強敵を克服する方法はプレイヤー自身の成長しか手段がないのが本作の厳しいところ。

だけど安心してほしい。たとえ敵が経験値くれなくても何度ボスに蹂躙されようともプレイヤーの身体には確かに経験値が刻まれている。心さえ折れなければ必ず勝てる。

とにかくストレスが少ない

スタミナの概念が無い

本作には前作までと違いスタミナゲージが存在しない。なんと言っても狼は凄腕の忍び、当然スタミナなんて概念はない。だって忍びだもの。

おかげでジャンプや走り回って距離を取ることも自由だし、回避や攻撃でスタミナを気にする必要がないからとにかく気持ちよく戦うことができる

だけどその分スピーディな攻防が展開されるため、ダークソウルシリーズに慣れているプレイヤーは思い切り面食らうだろう。

落下ダメージの緩和

凄腕の忍びは大抵の高さから落ちてもダメージを受けない。画像のような目の前の屋根に落ちてもダメージは無い。

そのおかげもあって今作のステージは総じて起伏が大きい。あちこち飛び回って走り回るため探索のしがいがあるだろう。隠しアイテムなどもあるため一度プレイしたマップでも「こんな場所あったんだ。」という発見もあるだろう。

デスペナルティは軽い

死にゲーらしく今作にもデスペナルティはもちろんある。経験値をロストしても回収することができた前作までと違い、今作ではお金とスキル経験値を半分失い、それを取り戻すことはできない。

死んでもお金やスキルポイントが減らない「冥助」という救済処置もあるけど、これは最大でも30%の確率でしか発動しないためこれに頼る機会はほぼない。そもそもこれをあてにすること自体が間違いの完全に空気な要素。

しかしスキル経験値は今溜まっているゲージが半分になるだけで、溜まりきった経験値は減らないため頑張って溜め切ってしまえばデメリットを減らすことができる。

お金も銭袋というアイテムと交換すれば死んでも無くならないため、取り戻すことができないから重いと思われがちだが、その程度はプレイヤーが調節できるため今回のデスペナルティはかなり軽い。

前作ブラッドボーンでは消耗品なのがネックだった回復アイテムも、ダークソウルと同じく死んだり休憩すれば補充される仕様に戻った。おかげで死んで失うものが限りなくゼロに近いため、気軽に死ねて何度でも挑戦できるためとても快適になっている。

回生と竜咳の要素は微妙

回生はただの残機

狼は御子から不死の力を分け与えられているため、一度死んでも生き返ることができる。

左下のHPの上にある桜色のアイコンが回生できる回数なのだが、回生を発動すると連続で使用することはできない。回生後に敵を倒したり、忍殺することで回生の力を得ない限り再使用はできないんだ。

つまりボスなどの強敵相手に連続で死ねるのは一度きりということになる。

公式では雑魚との戦闘に負けてしまったらこれを利用して、油断して背を向けた敵を忍殺するような使い方が示されていたが、回生する瞬間に音が出ているのか知らないけど復活した瞬間に振り返ってくるのが殆どで、不意打ちはほぼ不可能と思っていい。

敵が離れるまで待てばいいと思うけど、回生には時間制限があるため悠長に待っていると画面がどんどん暗くなっていき、本当に「死」んでしまう。果てには狼の死体の目の前で棒立ちになる敵もいるため、一回は死ねる程度に思っていた方がいい。

竜咳は殆ど意味ない

狼の「死」が積み重なると身近な人々が「竜咳」という病に罹ってしまう。咳が止まらず血の混じった痰を吐くというとても辛そうなものだが、NPCが竜咳になったとて狼に大したデメリットはない

仏師が咳で苦しそうでも義手の強化はしてくれるし、商人がゼェゼェいってても買い物はできる。しいて言えばNPCの絡むサブイベントが進行できなくなるくらいで、普通にプレイしているだけなら時に考える必要はない。

竜咳の患者が多くなると冥助の確率が下がってしまうデメリットがあるが、先ほども言ったようにそもそも冥助自体が必要ないため、これも特に気にする必要はない。

竜胤の雫というアイテムを拾うか購入すれば、鬼仏のメニューで全員まとめて治療が可能。必要な時以外は特に気にする事はない要素。

雑魚敵が雑魚じゃない

SEKIRO(株)フロムソフトウェア

フロムのゲームなんて大体全部そうだろって思うけど、SEKIROの雑魚敵は本当に強い。序盤はともかく終盤に近付くほど、お前ら本当に雑魚かよて思うくらいに強くなる。そんな奴らが集団で襲ってくるんだから手に負えない。

一部の雑魚はボスより手強い

寄鷹衆

天狗の面を被った腕が異様に長い敵。葦名の忍びとのことでその多くは城の屋根の上で見張りをしている。序盤の終わりごろ、本城に侵入する際に戦う事になる。

かなり目が良く視界に入るとすぐさまこちらを見つけてきて、そのクソでかい手裏剣をぶん投げて遠距離から牽制してくる。手裏剣は大きく弧を描いて画面外から飛んでくるため弾きのタイミングが分かりづらく、一体だけでもほぼ絶え間なく投げてくる。複数を相手取ると四方八方から飛んでくる手裏剣になすすべもなく死ぬ事になる。屋根を飛び移る際に手裏剣で叩き落された時に殺意が湧いたのは俺だけじゃないはず。

他にも手裏剣に炎を纏わせた者や、組み付いて自爆特攻してくる者、上空から「ホォォォォ!」と奇声を発しながら突撃してきたりと、とにかくいろんな意味で印象に残る敵。

孤影衆

恐らく初対面は捨て牢の個体。中ボスポジションだったが中盤の後半に差し掛かると、寄鷹衆に代わるように雑魚敵として登場してくる。

最初はビビるくらい強い。特に蹴りのモーションの出が早く連続の蹴りが強力。早いかと思えばディレイをかけて少し溜めてから攻撃してきたりと、とにかく動きが分かりづらい。寄鷹衆のような遠距離での攻撃手段を持たないため害悪度は低めだが、お供に犬を二匹連れているものや毒状態にしてくる者もいるため、こいつらを複数同時に相手にするのは骨が折れる。

俺は寄鷹衆の方が苦手だった。

仙峰寺の薙刀僧兵

物語中盤、不死斬りという刀を求めて金剛山仙峰寺という場所を訪れる。そこで待ち構えるのは両刃の薙刀を持った僧兵。通称ゲルググ、こいつがイカれてるほど強い。下手するとボスより強い。

動きが早くモーションが読みづらいうえ、攻撃の後に距離をとってくるため隙が無くこちらの攻撃が届かない。距離を取ればクナイで追撃してくるし、恐ろしい速さのスライド攻撃で距離を詰めてくる。近接戦闘においてやられたくない事を全部やってくるうえ、単体で配置されていないため必ず2体以上がセットで戦う事になる。

唯一の救いは空中忍殺できる瞬間があるため、それを狙えれば短期決戦に持ち込める。しかしその技を敵が使ってくる頻度がそんなに高くないし、そもそも俺は空中忍殺が使えることを知らなかった。真正面からまともに戦うのは本当にお勧めしない。

ボス戦がエグいほど楽しい

とにかく戦闘の緊張感がレベチ。道中の中ボスでさえ苦戦するゲームだから当然だけどとんでもない強さを誇る。初見突破はまず不可能と思っていい。

前途の通りゴリ押しの要素を徹底的に排除したゲームシステムのおかげで、ボスを倒すためにはプレイヤー自身の上達が必要不可欠だ。

SEKIROを超高難易度と言わしめる原因はここにあるわけだが、そのぶん乗り越えた時の達成感と自身の成長を感じる瞬間は何物にも代え難い感覚だ。

エモーショナルな和風BGM

西洋がモチーフだった過去作と違い、本作の舞台が日本なのもあってBGMは和を感じるものとなっている。

戦闘BGMは壮大さよりも一瞬も気を抜けない緊張感や恐怖を煽るようなものが多く、ボスの迫力に気圧されたプレイヤーをさらに焦らせてくる。マップBGMは荒廃した戦場の悲壮さや現世から少し離れたような神秘的な妖しさを醸し出すものもあり、本作の雰囲気を底上げしている。

他にもいくつかお気に入りのBGMがあるんだけど、それは後に紹介したい。

何度でも再戦可能

そんな魅力しかないボス戦が、今作ではいつでも何度でも再戦可能。しかも記憶の中での再戦なので負けても何も失わないという神仕様。

各ボスを撃破したら鬼仏に新しいメニューが追加されるため、クリア後の隠し要素みたいにもったいぶった要素ではないのも太っ腹だ。

クリアしても特に報酬は無いが、本作の目玉である緊張感の高いボス戦を何度でもプレイできて、その度にあの達成感に浸れるというのがプレイヤーへの一番の報酬といえる。

良ボス達

そんな強敵揃いの中でも俺が特に印象に残ったボスをいくつか紹介したい。

葦名弦一郎

戦闘直前のムービーも相まってプレイヤーの気分は最高潮。因縁を晴らすため、御子を奪還するため、そのアツイ展開に高揚したのはきっと俺だけじゃない。

最初に戦った時はまだゲームに慣れていないプレイヤーに死にゲーの洗礼を浴びせてきたわけだが、この頃にはプレイヤーもゲームのシステムを理解し目も慣れているため初回ほどの絶望感は無いだろう。

予備動作が大きい斬撃、連撃の締めの突きや下段攻撃に加え、防御不可の掴み攻撃や距離を取ると弓矢も使用してきたりと多彩な攻撃をしてくる。動きを覚えてやっとの思いで撃破しても、雷を利用した攻撃やモーションが異なる第二形態があるため「SEKIROにはこういう要素があるんだよ」いう事を実戦で教えてくれる先生ポジション。

そのため「弦一郎を倒すまでがチュートリアル」という声も少なくない。本番はここから。弦一郎が余裕で倒せれば一人前と言っていい。

まぼろしお蝶

狼に義父と共に忍びの技を教えた師匠。人によっては弦一郎より先に戦った人もいるかもしれないが、この時点ではかなり強めのボス。

こいつの特徴は、攻撃を弾いてもHPが減らない限り体幹ゲージが恐ろしい速さで回復すること。そのため防御に徹していては一生勝つ事はできない。とはいえ常に攻撃と弾きを繰り返していれば体幹ゲージを貯める事はできるため、攻め続ける事の大切さ、弾きの大切さ教えてくれる先生とも言える。

第二段階では幻術を使いフィールドを埋め尽くすほどの雑魚を召喚してくる。幻術の雑魚敵でもダメージはしっかり食らうし、加えて防御不可の追尾してくる光弾を自身の攻撃の合間にも放ってくるため、色々なものに気を取られてるうちに囲まれてタコ殴りにされるのはザラ。

幻術を破るアイテムを持っていなければ苦戦は避けられないが、序盤ではそのアイテムはほとんど手に入らないため、挑戦するのがが早ければ早いほど難易度は高くなる。

義父

狼を戦場で気まぐれに拾い、忍びの技術のすべてを授けてくれた義父「大忍び・梟」。本編開始時点では賊の襲撃を受け既に故人であるはずだったがそれは偽装であり、真実は御子と竜胤を我が物するため賊を手引きした張本人。本編中盤、狼と御子の前に再び現れる。

彼が狼の師であることを教えるかのように、狼と同じ技や忍具を使用してくるのが特徴。手裏剣を使うのはもちろん爆竹に紛れて攻撃してきたり、降参したように見せかけて襲ってきたりと、侍とは違って忍びらしくこちらを惑わせるような動きをしてくる。

注意しなければならないのは間違っても突き攻撃をしてはいけないこと。狼と同じく攻撃を見切られて刀を足で踏みつけ忍殺をされてしまうから要注意だ。

エンディング分岐によっては狼の記憶の中でもう一度戦う事になる。

全盛の義父と自らが技を授け育て上げた倅との本気の戦いという、バトル漫画にありそうな激アツかつ悲壮な展開。ちなみにこちらは全盛の姿とのことでその強さは1度目とは比べ物にならない。

基本的な攻撃は1戦目と同じだが、圧倒的に違うのはそのスピード。まあ同じ敵だし、なんて余裕かましていたら防御不可の突き刺し攻撃や爆竹を交えた怒涛の連撃を食らって即あの世行きだ。

そしてBGMが本当に素晴らしい。フレーバーテキストを読むに、壮大でどこか悲しげなこの曲は義父と狼の心を表したものなのだろうか…。

戯れに拾った飢えた狼
これを忍びとして育て、己が技の粋を
叩き込んでゆくのは、存外に面白いものだった
いずれ命を賭した真の戦いを、願うほどに…

エマ&葦名一心

薬師のエマと老齢の葦名一心の計2連戦。バッドエンドルートのボスとして登場する。前哨戦であるエマとは、義父の命によって御子を捨てた狼を斬るために戦う事となる。

激しく緊張感を煽るBGMが多いこのゲームの中で、九郎を救うという同じ目的で戦っていたはずの仲間と戦わなければならないという悲壮さを見事に表現したBGMは、静かながらも確かな存在感を放っている。

人外の多いSEKIROにおいて極めて普通の人間らしいボス。忍殺ゲージも1本と難易度も易しめ、と思わせておいて凶悪な投げ技と舞うようにしなやかな剣技で狼を追い詰めてくる。後ろに本命の葦名一心が控えているため回復は温存したいところ。

忍殺時、エマの背中に手を添え見つめ合うように息絶える演出がとても良い。

仲間であったエマをも斬り捨て、微かな笑みを浮かべる狼。人斬りの快楽に目覚めた修羅を斬るため、天狗の面を捨て立ち上がった葦名一心。燃え盛る天守閣での一騎打ちとなる。

忍殺ゲージは2本。葦名流の生みの親らしく葦名流の剣術はもちろん、エマが使用してきた投げ技も使用してくる。そして凶悪なのは第二段階。刀に炎を纏わせた攻撃や床から火柱を生み出す技が追加される。極め付けは無数の剣閃と居合い斬りが合わさった技「秘伝・一心」これがとにかくカッコいい。

最高すぎるシチュエーションと最強の敵。これで盛り上がらないわけがない。

ラスボス

ネタバレ注意

剣聖 葦名一心

弦一郎の振るうもう一振りの不死斬り・開門。竜胤の血と自らの身体を供物とする事で黄泉の門を開き、使い手が望んだ者を全盛の姿かつ不死で蘇らせるというトンデモ設定。

孫である弦一郎の願いによって病に倒れた葦名一心は黄泉帰りを果たし、哀れな孫に代わり葦名を黄泉帰らせるため隻狼と対立する。

忍殺ゲージは3本。前座の弦一郎を含めれば忍殺ゲージは計4本分と最多。本作のラスボスであり剣聖の名に違わぬ強さを誇る。

最初は刀一本だが忍殺を決める度に槍や銃といった武器が増え攻撃パターンが変化する。特に槍の跳び退き攻撃は予備動作が少ないため喰らいやすい。距離を取っても銃で追撃されるため安心はできない。なかでも高速の斬撃で真空波を飛ばしてくる技は最早人間の域を超えている。さすがは剣聖。

とはいえ状態異常などの小細工は一切無く、純粋な斬り合いを楽しめるし理不尽な攻撃も無いため、強いけど楽しいが成立している。戦っていて楽しいのもあるが、今回は何といってもシチュエーションが熱い。

その戦いの舞台は火の粉が舞い雷鳴が轟くススキの丘。燃え上がる葦名の城を背景に死力を尽くし力をぶつけ合うというシチュエーションに心踊らない人がいるだろうか、いやいない。

決着がつき潔く負けを認め隻狼の介錯に身を委ねるその姿は、敵ながら天晴れだ。

クソボス達

さて…ここまで褒めちぎってきた傑作にクソボスなんているわけないだろって思うだろう。俺もそう思いたかった。

もちろん数は圧倒的に少ないけど、たった数体でここまでの悪印象を付けてしまっているのを考えると、そのクソさ加減が窺える。

早い話が、ここに分類されるボスは軒並みSEKIROのゲーム性から外れていて、セオリーである弾きとか攻め続ける事で体幹を削るという戦法が通じにくいものが殆ど。

火牛

かなり序盤で戦うことになる中ボス。やたら硬いうえずっと走り回っているから攻撃が届きにくく長期戦になりやすい

攻撃のパターンは少ないけどモーションが読みにくいうえ当たり判定も分かりづらいため、弾きのタイミングが掴みづらい。弾いたとしても状態異常の炎上ゲージが蓄積するため走って逃げながら駆け寄ってチクチク殴るだけのヒット&アウェイを強いられる。

なんか知らないけど倒せた感が否めず自分の成長を感じにくいため達成感も少なく、戦っていて全く楽しくない。今作のボスの中でも俺の評価は最低レベル。

獅子猿&首なし獅子猿

神ゲーから産み落とされた究極のゴミ。首なし獅子猿と獅子猿の二匹同時という理不尽の権化

ダークソウルでもオーンスタイン&スモウという二対一のシチュエーションはあったけど、あっちは素早いと遅いの組み合わせだったのに対して、獅子猿2匹は割と動きが早いしリーチも長い

倒し方、もとい爆竹が有効なアイテムである事に気付けなければ勝つことはかなり難しい。ゲームの進め方によっては戦う必要がないというのが唯一の救いだろう。

そんなクソ具合に対してBGMはめっちゃかっこいい。イントロの「バァーーン」はずるい。

特に第二形態のバイオリンの音色は、迫り来る巨体と歪められた命の不気味さを引き立てている。とても素晴らしい。

怨嗟の鬼

いわゆる裏ボスポジションのこのボス。特定の会話を盗み聞きする事でこのボスの正体が判明するのだが、その素晴らしい演出と悲壮な最期は是非プレイしてその目で見ていただきたい。

ボスとしての特徴は攻撃を弾いても体幹ゲージがほとんど貯まらないため忍殺が狙えないこと。そのため忍殺ゲージ3本分の膨大なHPを全て削らなければないないため長期戦を覚悟する必要がある。

加えて火牛と同じくほぼ全ての攻撃で状態異常の炎上ゲージが蓄積するため、攻撃を弾いてもメリットがない。そのため戦闘スタイルは回避主体のヒット&アウェイになりがちで、これはどちらかというとブラッドボーンに近い戦い方のため極めてSEKIROっぽくないボスといえる。

決してクソというわけではないし動きを覚えて立ち回るという点ではとても楽しいのだが、さっきも言った通りこれがSEKIROとして楽しいかと聞かれると疑問が残るボス。

ただ一つの必勝法

敵の攻撃をよく観察して慎重に、時に大胆に攻める。そして何よりも諦めない事が大事だ。

何事にも言える事だが真の敗北は心が折れた時だ。心さえ折れなければそれは敗北ではない。

剣戟アクションの最高傑作

独特の妖しさと不気味さを孕んだ神秘的な世界観と、常に攻め続ける緊張感の高い戦闘システムは流石の一言。

回生や竜咳の要素が微妙とはいえ、ゲームの要である戦闘は全くストレスを感じる要素が無い。あまりにも死にゲーとして完成されすぎていると言わざるを得ない。

そんなSEKIROは一体誰におすすめなのか。

  • 剣戟アクションが好き
  • 最高の死にゲーをプレイしたい
  • もっともっと刺激が欲しい

そんな人は迷わず手に取って欲しい。きっと後悔はしないだろう。

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