【「FINAL FANTASY 零式 HD」レビュー(ネタバレ)】シリーズ随一のシリアスな物語と最高のエンディング。カメラワークがクソ。

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総合評価
( 3 )

13年前の今日。2011年10月27日、PSP向けに「FINAL FANTASY 零式」が発売された。ディスク2枚組という外伝作品とは思えぬボリュームで発売され、PSPの限界を攻めたクオリティはナンバリングタイトルに匹敵する程と言われていた。

その4年後、グラフィックや難易度を調整した完全版としてPS4向けに発売された「FINAL FANTASY 零式 HD」これの発売当時は課題に追われる学生だったということもありなかなかプレイできず、気づいたら9年も経ってしまい今更プレイするに至った。

というわけで今回は「FF零式HD」をレビューしていくんだけど、肝心の評価を先に言わせてもらうと劣化こそしていないものの操作性にやや不満の残るリマスターだった。

なぜ俺がそう思ったのか、零式がどんなゲームなのか見ていってもらえたらと思う。

この記事の目次

メインキャラは脅威の14人

ストーリーもののアクションRPGとしてはこの数は充実を通り越して多過ぎるまである。多すぎて誰が主人公かわからない部分もあるのだが、本編の内容的に0組の14人全員がそれにあたる。

キャラの性能もバランス型、近接型、遠距離型、魔法型などそれぞれ2〜3人用意されているため、必ず一人はお気に入りのキャラが見つかるはず。

声優が超絶豪華

おそらくFF史上最高に声優が豪華。多分これは2024年現在でも塗り替えられていないくらい凄い。

主役である0組のキャストは

  • 梶裕貴
  • 花澤香菜
  • 中村悠一
  • 茅原実里
  • 豊崎愛生
  • 沢城みゆき
  • 青木まゆこ
  • 入野自由
  • 小野大輔
  • 鈴村健一
  • 小清水亜美
  • 杉田智和
  • 神谷浩史
  • 白石涼子

などなど2024年の現在でも活躍されている声優達が多く見られる。サブキャラクターの方々も抜かりなく

  • 田中敦子
  • 櫻井孝宏
  • 諸星すみれ
  • 石田彰
  • 野沢雅子
  • 千葉繁
  • 内海賢二
  • 東地宏樹
  • 諏訪部順一
  • 林原めぐみ
  • 水樹奈々

それはもうとんでもなく豪華。残念ながら既に亡くなられた方もいるが、一度はその声を耳にした事のある声優達が勢揃い。ここまでキャストに金をかけたFF作品はおそらく零式のほかにないだろう。

多すぎて育成が追いつかない

14人の中から3人を戦闘に連れ出すことができるのだが、経験値が入るのは参加しているキャラだけ。ここだけ昔のポケモン式なので控えのキャラが全然育たない。

教室で授業を受ければ経験値がもらえるが、それだけで実戦に連れ出せるかと聞かれると無理。全員を満遍なく育てようと思うと時間がいくらあっても足りないので、育成するキャラクターは6人程度に絞ったほうがいい。

操作キャラや装備の変更が面倒

操作キャラクターの変更や装備の変更はレリック端末からしかできない。だから戦闘の合間にアビリティや魔法を付け替えたいとか、属性耐性の高いアクセサリに変更したいと思ってもそれができない。

飛行している敵がいる場合は選出したメンバーや装備している魔法によっては全く対応できないため、わざと一人殺してリザーブから遠距離キャラを投入するしか方法がない。とっても不便。

戦闘中じゃなくてもイベントなどで「◯◯を連れてきて」と言われれば、わざわざ端末まで戻ってキャラを変更してこなければならない。これまた非常に面倒くさい。

戦闘システムについて

一撃必殺が爽快で緊張感のある戦闘

特徴的なのはキルサイトというシステム。攻撃の直後など隙ができるタイミングで敵に赤いマーカーが表示され、その時に攻撃を当てればHPに関係なく一撃で倒せる。

一方でプレイヤーへの被ダメージもかなり大きく3〜4発喰らうと死んでしまうため脳死特攻が通用しづらい。終盤にはプレイヤーをキルサイト状態にしてくる敵もいるため、お互いに一撃で勝負が決まる緊張感があった。

敵の攻撃を回避しつつ、よく観察してキルサイトを狙う。この攻防の切り替えと敵を観察する大切さと、キルサイトを決めた時の爽快感が感じられるいいバトルシステムだった。

キャラの優劣が明確に分かれる

キルサイトを狙うというシステム上、これを狙いやすいかどうかでキャラの優劣がハッキリと分かれる。具体的には「動きの素早さ」「攻撃の初速」「リーチの長さ」このどれかを満たしたキャラクターでないと今作の戦闘はかなり厳しい。

キルサイトさえ狙えれば敵を倒せるためわざわざ被弾のリスクを冒して敵に近づくメリットがあまりなく、そもそも近接キャラでは攻撃が届かない敵もいる場合もあるので圧倒的に遠距離キャラが有利なゲームシステムといえる。

一部の敵とキャラの相性が絶望的に悪い

第三章で戦うことになる魔導アーマー【ブリューナク】や、序盤と終盤に戦う飛行型魔導アーマー、最終章の一部の敵との戦いでは近接キャラには人権がない。 

しかも三章の場合は白虎ルシに奇襲され一人は必ず死んでしまうという初見殺し付き。ここでもしキング、ケイト、トレイを失おうものなら、この後のブリューナク戦の難易度は飛躍的に上昇する。

終盤の飛行型魔導アーマーと最終章の一部のマップでは近接キャラでは文字通りでも足も出ない。もし遠距離武器を使える仲間が育っていなければ本当に苦しい戦いになるだろう。

味方のAIがゴミ

とにかく味方の動きがゴミすぎる。AGやMPの残量を無視してアビリティや魔法を連発するし、要らない時に攻撃をするせいでキルサイトやブレイクサイトが発生しないなどとにかく足を引っ張る動きが目立つ。

遠距離武器なのに無駄に敵に接近するキングやトレイに、味方にバフをかける事ができるのにそれを使ってくれないデュース、MPが減ってないのに永遠にコンバート(MPを回復するアビリティ)を使い続けるレム。などなど…最近のゲームのAIの賢さを痛感する。

命と引き換えの軍神が微妙すぎる

作中の設定では軍神は命と引き換えに召喚される絶大な力を持った存在なのに、ゲームとしては使い勝手がいまいちでむしろ使わない方がいいと思わせられるレベル。

本作はキャラクターだけでなく軍神にもレベルの概念があるため、キャラクターとは別にこちらも育成しないといけない。そのうえ初期状態では長くて1分程度しか召喚できないのが致命的にキツい。キャラを一人生贄に捧げたのにこの有様。

もし本格的に運用するならこの短い召喚時間に耐えながらレベル上げをしなければならないのだが、召喚できるのは作戦中のみ、かつ足元に魔法陣が展開できる広い場所だけ。しかも一番レベル上げがしたいフィールドマップでの召喚ができないというクソ仕様。

仲間を犠牲にする必要があるのに即戦力にもならないし時間制限付き。それならキャラクターを育てた方がいいんじゃね?と思ってしまう。

俺的、0組ランキング

それぞれのキャラの性能とここまで話してきたゲームのシステムを踏まえて、0組14人のティア表を作ってみたので参考にしてほしい。

Tier1
エイト

とにかく動きが早く攻撃の初速も入力とほぼ同時なのでキルサイトが超狙いやすいが、リーチが超短いから敵に張り付かないと攻撃がマジで当たらない。

ボタンを押している間攻撃を自動で回避するアビリティ「夢幻闘舞」が強すぎる。キャンセル後の硬直もないため回避してすぐさまキルサイト、ブレイクサイトを狙えるぶっ壊れ具合。

ギルガメッシュのような格上の相手ともタイマンなら余裕で戦えるくらい強い。というかギルガメッシュはエイト以外で勝てるビジョンが見えない。

キング

キルサイトを狙う事に特化したキャラ。二丁拳銃の装填数は12発で、最終的には24発まで増やせる。

残弾数に気を配る必要があるが、近〜中距離のキルサイトを安定して狙うことができるし、エンドレスワルツで一方的にダメージを稼ぎやすい。

後に習得できるキックは出が早いので弾切れの時に近づいてきた敵への対処も可能。ただ少し打たれ弱い。

ジャック

抜刀時の移動速度が非常に遅いのが難点だが攻撃力がレベチ。相手が雑魚敵ならキルサイトを狙うまでもなく一撃で葬れる。

キルサイト状態の敵に一気に詰め寄る「引導渡し」や「見切り」「明鏡止水」といったカウンターがメインの立ち回りになる。

攻撃力の代わりに耐久が低く動きも鈍いため上級者向けという印象だが挑戦するメリットは大いにあるし何よりも使っていて楽しい。

Tier2
エース

抜群の回避性能を誇る中距離キャラ。回避がテレポートなので敵に囲まれても抜け出すことができるし無敵時間も長いので適当に避けてるだけでなんとかなったりする。

距離をとって安全圏からちまちま削れるし、接近されても近距離攻撃が可能。動きの鈍い敵は固定砲台のキャノンレーザーなどで応戦できるため、立ち回りの幅が広いオールラウンダーといえる。

デュース

笛で音の塊をふわふわ飛ばして攻撃する。当然キルサイトはまともに狙えないが、彼女の強みはアビリティで仲間にバフをかけられること。

アビリティ「コンチェルト」を使用すると仲間にオーラとプロテスがかかるため戦力の底上げができる。ただアビリティ使用中は無防備になるので自動回避のアボイドを手に入れてからが彼女の本領発揮。

ただ一点残念なのは今作の味方AIが死ぬほどバカなので彼女を操作しながらのプレイは苦痛。だから他のキャラを使いつつ後衛としてパーティに入れたほうが恩恵は大きい。

レム

魔法に特化したキャラクター。MPがかなり高く設定されており消費のデカいBOM系の魔法を連発できるうえ、アビリティでMPも回復できる半永久機関。

キャンセル魔法零式を習得すれば初段からガ系魔法へと連携ができるので一気に化ける。ただしパーティから離脱する期間があるので彼女に頼りきりは危険。

Tier3
トレイ

圧倒的な射程が持ち味の弓使い。最大チャージ時の一撃の重さと長い射程があるため制圧戦において無類の強さを誇る。

一方で戦闘での動きは遅めで近づかれると対処する術がなく、回避してからキルサイトを狙うのは少し苦手。

とはいえ最大チャージならキルサイトにこだわる必要はあまりないほどのダメージを出せるので、育成ではチャージレベルの強化を優先しよう。

ケイト

遠距離攻撃ができる、それが彼女の価値。キングと違って弾切れの心配がなく移動速度も早いので逃げる立ち回りが得意だが、プレイヤーの意図に反して勝手に攻撃がチャージされてしまうのが難点。

チャージ攻撃は反動が大きいうえ弾速も遅いのでキルサイトを狙いにくい。かといって撃ちっぱなしにしているとキルサイトが発生しないし攻撃力も低いから使いにくい。

クイーン

魔力が高めなのでレムがいない時の魔法要員にはなるがこれといった特徴が他にない。キルサイトは狙いやすい。

ナイン

HP、防御の高い典型的近接キャラ。攻撃の出が早くリーチも前に長いのでキルサイトを狙いやすい。

いらない子
シンク

ジャックの下位互換。一撃が重いのが売りだが振りが遅すぎて全く当たらない。

ラスボス戦ではこのキャラでブレイクサイトを狙わなければならない場面がある。苦痛。

サイス

通常攻撃の振りが少々遅いうえ当たり判定が微妙に狭いためキルサイトが狙いづらい。

敵を倒す事で怨念を蓄積して攻撃力が上がる特徴を持つが、そもそもキャラの使いにくさが上回るうえダメージを受けると怨念が減衰するため余程立ち回りが上手くないとこの恩恵にあずかれない。

セブン

使いにくい。ただひたすらに使いにくい。長めのリーチと範囲攻撃が魅力だが雑魚相手ですら通常攻撃コンボを抜けられる始末。

使いこなせば強いとは聞くが触った感触が非常に悪いのでそこまで使いたいと思わせてくれないのが実情。

マキナ

軍神の生贄候補筆頭。昔から強いと思えたことが一度もない。レイピア二刀流という獲物からさぞ素早い動きが連想されるが動きは非常にノロい。

通常攻撃の振りも遅くアビリティ「スピンドライブ」など、そもそも動けなくなった敵への使用を想定しているものが殆どなので非常に使いづらい。

二週目では超強化された彼を使用できるイベントがあるのだが、常時ヘイストで移動は超絶キビキビしているのに攻撃モーションは相変わらずノロい。大器晩成型とか玄人向けとか言われてるけどそこまで使いたくならない。使える人はすごい。

カメラワークがゴミ

とにかくカメラがゴミ。久しぶりにゲームで酔ったくらいにはひどい。昔PSPで遊んでた頃は何とも思わなかったけど、大人になって目が肥えてから見てみるとこれは本当に酷い。

移動時、戦闘時問わずとにかくカメラが近いし感度も高いしブラーもエグい。しかもキャラを動かすとカメラが正面を向くように追従するので視点移動が思うようにいかない。

  • カメラ距離
  • カメラ感度
  • カメラ追従のON/OFF
  • モーションブラーのON/OFF

こういった操作の快適さに関わる全てが調整できない。

戦闘中はもっとゴミ

敵をロックオンするとやたら視線が低くなるし背景のぼかしも強く視認性が超悪いので敵との距離感が死ぬほど測りづらい。特にリーチの短いエイトやジャックだと距離を見誤って攻撃が当たらないのはザラ。

ターゲットを変更したり回避モーションから敵の方に向き直るとき、動きの激しい敵だとカメラがグワンッて動くから画面の変化が目まぐるしく、戦闘のスピーディさも相まって酔いが加速する。

更に致命的なことに狭いところや草の多いところだと視界がまともに確保できない。終わってる。

Steam版なら全て調整可能

しかしSteam版ならカメラに関する全ての調整をすることができるらしい。ぜひともアプデで追加してほしい。

ハイリスクローリターンのS.O

S.Oはマザーことアレシアから0組に下される身体能力テスト。これを受ける受けないは任意であるものの、失敗すれば即死というとんでもないペナルティ。

そのリターンは各種バフ効果と達成時の報酬。ものによっては武器やアクセサリー、軍神といったレアな報酬もあるが、それを死のリスクを背負ってまで手に入れたいかと聞かれるとNo。どう考えてもリスクとリターンが釣り合ってない

しかも受注のタイミングと内容によってはそもそも達成できないものもある。例えば「落ちているアイテムを◯個拾え」なら受注前に1つでも拾っていたら達成できないし「飛空艇を撃破しろ」なら戦闘メンバーに遠距離キャラか魔法を装備したキャラがいなければ達成できないし「敵二体をキルサイトで倒せ」という内容でも仲間達が魔法で殺してしまえば達成できない。

一応マップを切り替えれば受注したS.Oは破棄されるので死ぬことを回避することは可能。これを利用してマップが切り替わる直前に受注してバフ効果だけもらうというのもアリ。

不便で退屈で単調なサブクエスト

内容が単調すぎる

零式のサブクエストは吐き気を催すレベルで単純で単調。その内容も「特定の敵を◯体倒せ」「特定のアイテムを◯個持ってこい」が殆ど。

報酬も「ポーション10個」とかアクセサリ類が大半で薄味なうえ「助かったよ、ありがとう。」「よくやった。」と言われるだけで世界観の深掘りなんてものはされないので本当にやる気も起きないしやる意味がない

同時受注ができない

意味不明なことにサブクエストの複数受注ができない。例えば「ポーションが1つ欲しい」というごく簡単なクエストすら他のクエストを進行中なら一度それを破棄しないと進行できないという不便さ。

「特定の場所でモンスターを◯体倒せ」という依頼が複数同時に発生すれば、普通ならまとめて依頼をこなしたいのにそれもできないから非常に面倒。

どこに発生しているのか分からない

しかも致命的なことに、どの場所にイベントや依頼が発生しているのかが現地に足を運ばないと分からない。

マップがあるくせにイベント発生の有無が一切表示されていないのは不便すぎる。せめて魔導院の中だけでも発生しているイベントを表示してくれてもいいだろ。

時間潰しにしかならない

ワンパターンな依頼内容で薄味すぎる報酬や、同時受注ができず無駄にフィールドと魔導院を行き来させるような仕様も、全ては自由時間の暇つぶしでしかなく時間を消費させるのが目的。

レベル上げのついでにしょうもない依頼を用意しておく事でワールドマップに出る口実を作っているようにしか思えないのだ。そのくらいつまらない。

命の儚さを感じるシリアスな物語

テーマは戦争と死、そして絆

本作のストーリーの9割は戦争で構成されており、戦争で命を落とす人々や残された人々にフォーカスを当てた物語はFFシリーズとしてはかなりビター。

戦争ドキュメンタリー風のムービーを通して描かれる凄惨な光景や戦死者数は戦争の恐ろしさをまざまざと見せつけると同時に、年端もいかない若者たちが死を覚悟して戦いに赴く様は胸が締め付けられる。

死者の記憶を失くす世界

この世界では死者は忘れ去られるというルールがあり、命をかけて守った相手から忘れられる寂しさ、そして守ってくれた人を忘れてしまう虚しさを全編通して描いている。

みんなの記憶から消えるとしても大切なものを守るために、自らの命と引き換えに軍神を呼び出す決死の覚悟は特攻隊を思わせる。

誰かと共に過ごした時間は覚えていても、その人の記憶だけをすっぽりと失くしてしまう。声を聞いたことも、手に触れていたことも覚えているのにその人の存在だけが抜け落ちてしまう喪失感は想像を絶するだろう。

生死を共にする仲間との絆

これについてはエンディングの項目で詳しく解説したい。

色々と問題だらけの最終章

展開が唐突すぎる

戦争をメインに据えたシリアスな物語をずっと展開してきた本作。第七章にてついに戦争が終わり「帰ったら祝杯だー!」なんて舞い上がっていた矢先、空が赤く染まり【ルルサス】と呼ばれる軍勢に世界は埋め尽くされ物語は最終章に入る。

ここから怒涛の勢いでプレイヤーの脳には零式独自の用語が叩き込まれることになる。フィニスって何や?審判?アギトって結局何?ルルサス?エテロ?不可視世界?最終章に来ていきなり独自の単語出しすぎだろ。

そしてなんか知らんうちにラスボスと戦ってゲームが終わる。ラスボスは何がしたかったのかも謎だし、見たことない仮面のキャラも出てきたと思ったら一切触れられることはなかったし、クリスタル化したはずのマキナとレムは帰ってくるし、アレシアも結局どういう存在なのか語られなかったし…

もうほんと、わけがわからん…

全ての元凶はクリスタル神話

それもこれも当時のスクエニが作り上げた独自の神話【ファブラ・ノヴァ・クリスタリス】が全ての元凶。これはFF13を起点とした「ひとつの神話を共有する複数の作品群」というコンセプトから生まれたもので、零式もその一つというわけだ。

【エテロ】や【不可視世界】という単語もこの神話に登場するキーワードなので、このクリスタル神話について自分で多少なりとも調べないと零式のストーリーを理解するのは不可能。

とはいえ公式の情報なんてろくに残っていないので、非公式のまとめサイトで情報を補完しなければならないのが実情。コンセプトはわかるけどそれをするならせめてゲーム内で情報を完結させるべき。これでは情報不足で全く楽しめない。

初見殺しの「審判」

ラストダンジョンの万魔殿では【審判者】による審判が行われる。内容も基本的にはS.Oと同じだがこちらは拒否不可。

12人のメンバーから3人を選出して2チームに分かれて行動することになるのだが、各ルートで下される審判の内容が選出メンバーによってはどう足掻いても達成できず詰むので初見殺しと言ってもいい。

高所にある燭台に火をつけてからでないとダメージが入らない敵なんかは近接キャラで挑んだ場合確実に詰む。「敵を魔法で殲滅しろ」なんて言われても魔法を装備してなかったらその時点で詰み。

ふざけるな。

切なすぎるエンディング

戦争しか知らない若者が夢見た未来

幼い頃から武器を取り、16〜17歳という若さで散っていった若者たち。確実に迫る死への恐怖のなかで戦いしか知らない彼らが語った無邪気な夢。

やりたいこと、見たいもの、行きたい場所、俺たちプレイヤーからすれば当たり前すぎて感じられない幸せな未来を語り合う。

死への恐怖に怯えていた彼らは次第に安堵の表情を浮かべ「ひとりじゃなくてよかった」と、ゆっくりと目を閉じる。

BUMPの曲で涙腺崩壊

いやほんと…なんだろう…これは反則。本当に泣けるし、この曲があって初めて零式の物語が完成すると言っても過言ではない。

FFのメインテーマが融合したラスサビ前の間奏は本当にずるい。このアレンジは音源化されてないから本作のエンディングでしか聞くことができないので一聴の価値あり。

特に好きなのは二番サビの歌詞

怖かったら叫んで欲しい
すぐ隣にいるんだと 知らせて欲しい

震えた体で抱き合って
一人じゃないんだと 教えて欲しい

ここはそのままラストシーンの教室が目に浮かぶ。死への恐怖に直面した0組の面々が、泣きじゃくるシンクに言葉もなくただ寄り添う場面だ。

兄弟がいるから「ひとりじゃない」

ここで思い出されるのはマキナの兄イザナとエースの会話。エースは初め0組の皆んなが兄弟なんて実感は無いし兄弟になりたいと思ったこともない。むしろ邪魔になることの方が多いと言っていた。

そんなエースにイザナは「兄弟はどんなに違う考え方でも、気に入らない性格でも運命を共にする」「兄弟がいるから、自分は一人じゃないって思える」「友達とも恋人とも違う、もっと泥臭くて、格好悪くて、でも…ホッとする絆がある」という。

どうすればそんな絆が生まれるのかとエースに問われ「共に厳しい『運命』に立ち向かうから兄弟の絆は生まれる」というイザナだったが、エースはそれにあまりピンと来ていない様子。それはきっとエースだけでなく0組の全員が同じような感覚だったんだと思う。

しかし物語は進むにつれ共に戦い過酷な世界を生き抜き、死に向き合い耐え難い絶望や恐怖に立ち向かい、運命を切り拓いた0組には血こそ繋がっていなくても確かな絆が生まれており、最期を共にできて名前を呼び合える兄弟を得る事ができた。

戦争しか知らない年端も行かぬ子供達が来るはずのない未来や叶うはずのない無邪気な夢を語り、穏やかな笑顔を浮かべ息を引き取る。手を繋ぎ、重ね、背中を合わせ、静かに、眠るように。

この切なすぎる幕切れは唯一無二。

説明不足を補えない2週目

だからといって本作の説明不足を擁護するつもりは一切無い。ゲームのなかで情報が完結していない時点で物語として破綻していると言ってもいいのに、その説明すらろくにされないのは狂ってる。

周回前提なのにモチベが薄い

2週目では受けられるミッションやキャラとのイベントが若干変わるためこれをやることで理解度が高まるのだが、そのモチベがあるかと聞かれるとそんなに無い。

というのも2週目だからといって全く新しい視点で物語が展開するわけでもなく、エンディングも変化しないからだ。単に裏ミッションのような高難度ミッションでストーリーが進んでいくだけで、1週目で謎だった部分に触れられるなんてことは殆どない。

ニーアレプリカントなんかはエンディングが変化したり別視点が追加されたり、聞き取れなかった言葉が聞き取れるようになったりと、1周目で明かされなかった謎や不可解な点が2周目で明かされるため遊ぶモチベーションに繋がっていたが零式にはそれが無かった。

「朱の目録」に頼りすぎ

じゃあ2周目をやるメリットって何?って話なんだけど、結局は辞書的な存在である「朱の目録」に情報が追加されるだけ。

シドが各国を侵略していた理由やエンディングに出てきた謎の仮面の男やアレシアの正体、ジョーカーとティスといった謎の人物についても全部これで補完される。

ふざけるな

誰もが一番知りたい部分をゲームプレイではなく資料で保管するなんて言語道断。しかもその開放条件もそれに関するイベントを見たとかじゃなく単に二週目のクリアってだけなのもお粗末。

面白いのにシステムと魅せ方が惜しい

戦争をメインに据えたシリアスな物語と、大切なもののために命をかける若者たちの物語。穏やかな学園生活と残酷な戦争という対極の要素を混ぜ合わせた世界観は魅力的。

一撃で勝負が決まるキルサイトによる戦闘の緊張感や吹き出る血飛沫の演出も相まって、ゲームプレイを通して体験する過酷な世界を生き抜く0組やオリエンスの人々の人間ドラマはかなり評価が高い。

ただ絶望的に酷いカメラワークやほぼ死に要素である軍神、手間ばかりかかって旨みのないサブクエストはゲームとしての作りの甘さを感じてしまった。

特に最終章のプレイヤーを置いてけぼりにする超展開や羅列される独自の用語、そしてそういった不可解な点をゲームプレイではなく資料で補完する姿勢はとても評価されたものではない。

総じて良作ではあるもののシステムと物語の基盤であるファブラ神話に足を引っ張られた惜しい作品といえる。

ファブラ神話を共有する作品がこの先展開される可能性は限りなく低いだろうが、もし今後このような試みをするのであれば、必ずゲーム内で情報を完結させてプレイを通してプレイヤーに情報を伝えてくれる設計にしてくれる事を祈る。

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