Fire TV StickでXbox Cloud Gamingを遊んで思ったこと【”まだ”いらない】
今年の7月ごろ、Xbox Game Pass(以降、ゲームパス)のサービスのひとつであるクラウドゲーミングがFireTVstickに対応した。
FireTVstickは昨年Google TV搭載のテレビに買い替えたことでお役御免となっていたのだが、今回の報せを聞きクラウドゲーミングとやらがどんなものかという完全な興味本位から、再びFireTVStickを購入して実際にプレイしてみることにした。
というわけでXbox、もといMicrosoftが提供するクラウドゲーミングを実際に試してみてみたのだが「”まだ”いらない」という結論に至った。
なぜ俺がそう思ったのか。そしてクラウドゲーミングは実際どんなものなのか、順を追って解説していきたいと思う。
コンソール不要のゲーム体験
Microsoftの展開するサブスク「ゲームパス」のクラウドゲーミングは、ゲーム機など特定のプラットフォームを必要としないゲーム体験を提供している。
本来ならXboxを購入したり相応のスペックのPCが必要なのだが、クラウドゲーミングではスペックを問わずストリーミングでコンソールゲームをプレイする事ができる。
それはXboxやPCのみならずスマホでも可能で、安定した通信回線さえあれば場所を選ばずにゲームが楽しめるという画期的なサービスだ。
手順1.必要機器を用意する
必要なのはたった二つだけ
そんなクラウドゲーミングの対応デバイスにFire TV Stickが追加された。
遊ぶにあたって必要なものはFire TV Stickとワイヤレスコントローラーの2つだけ。たったこれだけで数百(公称)を超えるゲームタイトルを遊ぶ事ができる。
コントローラーはなんでも良い
プレイするにあたってXboxのコントローラーが必要と思われがちだが、実のところなんでも良い。
公式曰くPS5、PS4のコントローラーにも対応しているとのこと。ほかにもSwitchのプロコンやサードパーティのワイヤレスコントローラーでも遊べたという声もTwitterで散見される。
俺はPC用のXbox純正コントローラーを持っていたのでそれを使った。これから買う人も好きなコントローラーを選ぶといいだろう。
Fire TV Stickの対応モデルに注意
Fire TV Stickにも種類がいくつかあり、ゲームパスに対応するモデルが限られている事には注意が必要だ。
対応モデルは以下の通り。(価格は9/14時点)
- Fire TV Stick 4K(第2世代)¥7,480
- Fire TV Stick 4K Max(第1世代)¥6,980
- Fire TV Stick 4K Max(第2世代)¥9,980
- Fire TV Cube(第3世代)¥19,980
それぞれのモデルに大した違いが無いので俺は1つ目のやつを買った。購入の際は注意されたし。
手順2.ゲームパスに加入する
Fire TV Stickをモニターやテレビに接続してセットアップを済ませたら、Xboxアプリをインストールしよう。
アプリを起動すればゲームパス加入の案内が出るので、それに従って進めていけばOK。
月額料金は少しお高い
ゲームパスには複数のプランが用意されているが、この中でクラウドゲーミングに対応しているのは最上位の「Game Pass Ultimate」のみで価格は月額1450円とNetflixのスタンダードとほぼ同じ価格。
他の動画配信や音楽系のサブスクが大体1000円前後であることを考えると少々高めの価格設定となっている。
単価を考えればお得だがかなり人を選ぶ
とはいえ音楽は一曲300円、アルバムなら3500円。映画は劇場なら2000円、円盤なら3000〜4000円程度。
一方ゲームは規模にもよるが大体が6000〜9000円とお高めなので、それを月1450円で遊び放題となればかなりお得に感じる。
しかしゲームはクリアまで30〜40時間はかかるのが一般的。一曲4〜5分の音楽や、一本2時間程度の映画のようにすぐに消化できるものではない。だからこのサブスクを賢く利用するには、ある程度まとまった時間を作ってプレイする必要がある。
しかしゲームはあくまで楽しむもの。時間に追われて「早く終わらせないと」と思いながら遊んでもそれはきっと楽しくない。だから俺と同じような感覚になってしまう人にはお勧めできない。
感想1.パフォーマンスは許容範囲
さて、そんなこんなで今回俺が試しにやってみたのはモンスターハンターライズ。
俺は技術解説系じゃないから感覚になってしまうのだが、画質フレームレート共にSwitchと同程度で動作しているように感じた。
解像度はおそらくフルHDでフレームレートは30fps。ゲームによっては60fpsも対応しているようで、一番心配だった入力遅延もそこまで気にならないレベル。
月額1450円のサブスクと7000円ちょいのFire TVとコントローラー6480円(Xboxコン)。合計15,000円ほどで最低限ゲームをする環境が整えられる。
さらにSwitchやPS5、Xboxなど、すでにゲーム機を持っている場合はコントローラーの分のお金はかからないし、既に対応モデルのFire TVを使っている場合は更に安く済ませられる。すごい。
TVの場合は必ずゲームモードにすること
接続機器にもよるのだが、もしテレビに繋ぐ際はゲームモード、もしくは低遅延モードになっているかを必ず確認してもらいたい。
うちのBRAVIAは接続機器を自動認証するタイプだったので自動で映像美を強化するモードになっており、鬼のような遅延に苦しむことになった。
初めはサービスの品質を疑ったが、疑うべきは自分だったなんて話はよくあること。遅延がひどい場合は、まずは自分の環境を見直してみよう。
感想2.スマホでいいんじゃね?
FireTVが選ばれる可能性は低い
クラウドゲーミングは安価にゲームが楽しめる素晴らしいサービスであることは事実なんだけど、数ある選択肢の中からFire TVが選びたいかと聞かれると答えはNo。
Amazon公式サイトで紹介されている利用環境は以下の通り
リビングルームで家族とゲームを楽しんだあと、手軽に別の部屋のTVに付け替えて楽しんだり、友達の家に持っていって楽しむこともできます。
Amazon Fire TV(ファイヤーTV)シリーズを使って、ゲーム機なしでXboxのゲームをプレイ:新しいゲームの楽… Xboxの人気ゲーム、Starfield(スターフィールド)、Fallout 4(フォールアウト4)、Forza Horizon 5(フォルツァ ホライゾン 5)などをAmazonのFire TVで楽しむことができ…
申し訳ないけど俺にはこの状況が1ミリも想像できなかった。というのも、想定し得るそれら全ての場面には必ずスマホが存在するからだ。
最強のライバルはスマホ
クラウドゲーミングの魅力は対応機器のマシンスペックを問わず、安定した通信回線とコントローラーがあれば遊べること。つまりスマホがあればクラウドゲーミングを楽しむことは可能だ。
今の時代スマホは一人に一台が当たり前。子供すらiPhoneを持ってる時代でスマホを持っていない人間を探すほうが難しい。
近年大画面化も進み動画やゲームなどのエンタメを楽しむにはこれ以上ない程便利で、バッテリーもちの良さや携帯性においてもスマホの右に出る者がいない。
これに加えて「Backborne One」のような小型かつ一体型のコントローラーも発売されており、デカいコントローラーを持ち歩く必要もない。
これはもうFireTVが悪いとかじゃない。操作性、携帯性においてスマホが最強すぎるだけ。
パソコンを持ってない人のための選択肢
いや違うと。俺はスマホじゃなくてテレビとかモニターのようなでかい画面で遊びたいんだと。そういった声が聞こえてきそうだ。
でもよく考えみてほしい。家にモニターがあるということは十中八九パソコンがあるはずだ。モニターはあるけどパソコンがないなんて環境は普通は考えられない。
そのパソコンが何世代も前のデスクトップだろうと、激安のノートパソコンだろうとクラウドゲーミングはできる。あとはそれをHDMIでモニターかテレビに接続してやればいい。
それにリビング以外に個別のテレビがあるような家庭ならば、既にゲーム機やパソコンがあってもおかしくないはずだ。尚更FireTVである必要がない。
それでもコレが選択肢に残るとすればパソコンを持ってない人になるわけだが、今の時代パソコンを持っていないのはそれだけでハンデになり得るので、ゲームに金かけるより先に型落ちの安いものでいいからパソコンを買った方がいい。
唯一の使い道は外泊先か
ここまで考えた結果想定される使用環境は、出張先や旅行先のホテル、または実家へ帰省した時くらいだろう。
まあそれでも「そこまでしてやりたい?」と思ってしまうので、かなりニッチな需要であることに変わりはない。
サービスは画期的だが需要は未知数
俺みたいな30手前の人間からするとゲームは買ってゲーム機で遊ぶものという考えが一般的…というか当たり前だったので、ゲームを買わずに遊べるのはちょっとしたカルチャーショック。
いや、厳密には金は払ってるんだけど、こんなに安く遊べて良いの?ってクリエイターが心配になるレベル。コレに関しては色々と物議を醸しているが、まともなマシンすら必要とせずクオリティの高いゲームが遊べるという、これまでのゲームの概念が覆される衝撃はかなりのものだった。
しかしFireTVにゲームパスが対応したこと自体は特に魅力とはいえず、どのような利便性もスマホという圧倒的強者に呑まれてしまい、今回のことでどれだけの人が喜んだかと聞かれればかなり少数であることは間違いないだろう。
ただ、俺のように興味本位でこの機会に初めてゲームパスというサービスに触れた人もきっといると思う。
このアクセシビリティと柔軟性の向上は、クラウド ゲームに興味を持っているすべての人にとって理想的な入口となりえます。
Amazon Fire TV(ファイヤーTV)シリーズを使って、ゲーム機なしでXboxのゲームをプレイ:新しいゲームの楽… Xboxの人気ゲーム、Starfield(スターフィールド)、Fallout 4(フォールアウト4)、Forza Horizon 5(フォルツァ ホライゾン 5)などをAmazonのFire TVで楽しむことができ…
そういう意味では彼らの言う「理想的な入口」という目的は達せられたのかもしれない。
まんまと乗せられた。悔しい。
理想は「クラウド料金+ゲーム購入」
このクラウドゲーミングというサービス。素晴らしいサービスなのだが、欲を言えばゲームを購入してストリーミングで遊べるようになれば最高だろうなと思った。
いやそれならゲーム機買えよって言われるだろうけど、ゲームパスは所詮サブスク。当然ラインナップに無いゲームは遊べないし、何よりもゲームは買って遊びたいというのが本音。
だからゲームパスのような遊び放題という仕組みの是非は一旦置いておいて、購入したゲームをストリーミングで好きなところで自由に遊べたらめちゃめちゃ画期的だと思った。
現状それに一番近い運用ができる最安の選択肢はXbox series S。コンソールならリモートプレイで操作できるしストアからゲームの購入もできるため、擬似クラウドゲーミングが可能となる。
Xbox series Sのパフォーマンスは現行機の中では低めだが、スマホサイズの画面にストリーミングするにはうってつけだろう。画面が小さければテクスチャの品質や解像度が低くても、テレビやモニターの時ほどは気にならない。
しかしXbox series Sの価格は44,570円。最安の選択肢であるはいえFireTVでの初期費用が約15,000円であることを考えると、ランニングコストがかからないとはいえかなり高くついてしまう。
ストリーミングで場所を選ばずプレイしつつゲームを購入したいとなると、途端に敷居が高くなってしまうのがネックだ。
もしこのクラウドゲーミングがゲームの購入に対応したとすれば、Fire TV StickはXbox series Sという存在に取って代わる、なんて事もあるかもしれない。
エントリーモデルはクラウドに置き換わるかも
昨今のXbox series Sを取り巻く事情を考えると、そう遠くないうちにこのポジションはクラウドゲーミングに置き換わる可能性もあるだろう。もしそうなれば、Fire TV Stickはゲームの入り口として素晴らしい選択になり得る。
Fire TV Stickとクラウド利用の定額料金とゲームの購入費用。買い切りのコンソールと違いランニングコストがかかる事は否めないが、最低限のパフォーマンスでゲームを遊びたい人にとっては最適な選択肢になるのではないだろうか。
そして4Kや60fps、VRRやレイトレーシングなど、更なるパフォーマンスが欲しい人はコンソールや相応のPCを購入するという構図になる。
もし後からパフォーマンスが欲しくなっても、それまでに購入したゲームはアカウントに紐づいているから引き継ぐことができる。
これからの進化に期待
安定した通信回線さえあればユーザーの環境に左右される事なく、ストリーミングでゲームを楽しめるクラウドゲーミングは魅力的なサービスだ。
だが現時点でFireTVにこだわる理由は全く無い。家にある適当なPCやみんなが持ってるスマホの方が圧倒的に利便性が高いのは言うまでもない。
PS5やXboxのリモートプレイ然り、今後5G通信の更なる普及によって場所を選ばず、さらに安定してコンソールゲームを楽しめる時代が来るだろう。
ただ画質やフレームレートが最低限という点を考えると、クラウドゲーミングはメインでがっつり遊ぶというよりも、あくまで暇つぶし程度に利用した方が幸せになれると思った。
それにサブスクという形態である以上月額料金の発生は避けられないので「とりあえず契約してやりたいゲームを探す」という使い方ではなく「やりたいゲームがあれば適宜契約して一気に遊ぶ」といった利用方々が賢い。
サブスクというのは数をこなしてなんぼのサービスだから、1つのゲームをじっくり遊びたいタイプの人は割を食うだけだし、ラインナップにやりたいゲームが存在しなければその価値はゼロに等しい。
何よりもゲームのサブスクに抵抗を感じる人は少なくないだろう。だからこそ欲しいゲームを購入できるようになって、尚且つクラウドストリーミングで遊べるようになってほしいと強く思った。
クラウドの利用料金を払って、ゲームを購入して、ストリーミングで遊ぶ。
この仕組みがもし実現可能なら、サブスクの是非はともかくクラウドゲーミングは超魅力的なサービスになるだろう。
今のところPlayStationでもサブスクに加入すればPS5本体でのストリーミングは可能だが、今後本格的にクラウド事業に参戦してスマホから直接ストリーミングでプレイができるようになる可能性もゼロではない。
ゲームの入り口がストリーミングで、ランニングコストをかけたくない人やより良い体験が欲しい人はコンソールを購入する。もしかするとゲームの未来が、そんな形に変化していくかもしれない。
その時どんなゲームが生まれるのか、どんなゲーム体験が得られるのか、想像してみるとワクワクが止まらない。