【「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」レビュー(ネタバレ)】新解釈FF1。輪廻の始まりを描く混沌の物語。

総合評価
( 4 )
概要
  • 2022年3月15日発売
  • 高難度本格アクションRPG
  • 「デッド オア アライブ」「NINJA GAIDEN」「仁王」で知られるTeam NINJAとスクエニの共同開発

発売当時、電気屋でポップを見て名前は知っていたけど現在まであまり興味を惹かれなかったこの作品。ゲームカタログに配信されていたFFの外伝作を攻めていたところ再びこのゲームに出会ったのでプレイしてみることにした。

各種レビューサイトではかなり評判が悪いということだけ聞いていてかなり心配だったんだけど、実際に遊んでみるとこれがまたかなり手応えのあるアクションで超面白かったので紹介していきたいと思う。

目次

どんなゲーム?

ダークで暴力的なフロム風FF

ソウル ✕ ハクスラ ✕ FF

基本的なデザインはステージの各所にチェックポイントがあって、そこで休憩すると回復アイテムが補給されて敵がリポップするというダークソウル方式。

武器や防具も従来のFFのように強いものを店や宝箱で手に入れてアップグレードしていくものではなく、ランダムでスキルやステータスが変動する武器を沢山集めて強い武器を見つけていくハクスラゲー。

そこにお馴染みのモンスターやMPを消費して発動するアビリティや魔法、ジョブシステムなどFFらしい要素が融合したゲームだ。

歴代FFファンへのサービス

本作の旅立ちの一幕なのだが…どうだろう、往年のプレイヤーなら見覚えのある風景ではないだろうか。

ほかにも作中に登場するダンジョンは過去作をモチーフに作られている。例えば

FF7の魔晄炉

FF8の炎の洞窟

FF9の魔の樹海

FF15のインソムニア城

などなど、過去のナンバリングタイトルを遊んできた人はハッとする場面が多いだろう。

ゲームプレイ

GOOD
  • 多種多様なジョブと選べる戦闘スタイル
  • 難易度調整が可能
BAD
  • ほぼ死んでるハクスラ要素
  • 明るいところが眩しすぎる
  • ショートカットの有り難みは薄い
  • 装備によっては顔が見えない

多種多様なジョブと選べる戦闘スタイル

盾と片手剣を扱う剣士、大剣を振るう大剣士、拳で戦う格闘士などなど基本となるジョブが8種類。DLCで追加される武器もあるためプレイの幅はかなり広く、自分に合った立ち回りの武器を見つけるのが楽しい。

基礎ジョブをマスターすると複数の武器を扱える上位、最上位ジョブが解放されていく。ジョブ固有アビリティも特徴的かつ強力になっていくためどのジョブが自分に合っているのか探すのも面白い。

個人的に大好きな基礎ジョブは格闘士。最上位ジョブのタイラントになると、通常攻撃に属性を付与できるから敵の弱点を突きやすくなるし、同じ属性で殴り続けていると耐性が下がるため無理やり弱点を作ることもできる。

動きも俊敏で隙も少ないので、敵に張り付きつつ攻撃を見極めてインファイトしたいプレイヤーにおすすめだ。

難易度調整が可能

オリジンにあってフロムにないもの、それは難易度調整。これがあるおかげでストーリーを追いたいだけの人でもアクションゲームに尻込みせず気軽に挑戦できるのは素晴らしい。

本作はアクションも楽しいけどストーリーも引けを取らないくらい面白いから、もし気になっているけどアクションが苦手って人でも安心して買ってもらえたらと思う。

ほぼ死んでるハクスラ要素

敵がドロップする武器をたくさん集めて、ランダムに付与されるスキルなどを厳選して自分だけの最強装備を構築できることがハクスラの魅力。要はガチャに近い感覚で自分の理想が手に入るまで装備を掘り続ける必要がある。

しかしストーリーをクリアする上で強い装備を集める旨みが殆どないのが実情。ストーリーを進めるたびに手に入る装備のレベルが上がって強くなっていくんだけど、誤差とかそんなんじゃなくて普通に強い装備が手に入ってしまうのであえて厳選をするほどの旨みがない。

ちなみに難易度HARDでプレイしてたけど、装備を厳選しなければ勝てないような状況になることもなくクリアできてしまった。スキルやジョブボーナスを厳選したところでストーリーが進んで装備レベルが上がると、新しい装備をつけたほうが強くなれてしまうならやる意味がない。

俺がまともに装備厳選に向き合ったのはDLCに入ってからだった。スキルやジョブボーナスを他の装備に移せる「装備合成」が追加されたからというのもあるけど、この機能って最初からあるべきなんじゃないの?

ハクスラゲーにあまり触れたことがないのだが、そういうものなのだろうか…。

明るいところが眩しすぎる

ご覧の通り明るいところが白飛びしてしまっている。眩しすぎて目が痛いです。PS5のゲームでHDRが初めていらないと思った。

かといってHDRオフだと全体的に彩度が低いのでぼんやりした画になってしまう。そう頻繁に出くわす状況ではないけど大きな不満点。

ショートカットの有り難みは薄い

ソウルゲーらしくショートカットを作れる場所もある。昇降機とかロープを伝ったりと用意されてはいるんだけど本家と違ってそこまでありがたいと思えた場面が無い。

というのもショートカットを作ったところでちょっと進めば新しい回復ポイントがあるからわざわざ戻る理由がないし、戻ったところで何をするわけでもないからだ。

しかも一度ステージをクリアして再訪したら全てリセットされてるので本当に何の有り難みも感じなかった。ガワだけ真似ただけでは意味がない。

装備によっては顔が見えない

ストーリーで挟まれるムービーにも装備は反映されるため、肝心なところで頭防具で顔が見えなくなって残念…なんて事に

そんな事態を回避するために、オプションで頭装備を非表示にできるのだが一部それが反映されない防具が存在する。

このように複数の部位が合体した一体型の防具がありるのだが、頭部と胴体が一緒になったタイプの防具は頭装備の非表示の対象外。

深くフードをかぶっていたり盗賊のようなマスクをしていたりするので顔が全く見えない。物語の大事なところでカッコよく啖呵を切っても画面に映るキャラクターがカッコ悪ければ台無しだ。

だから俺は性能を犠牲にしてでも一体型を避けていた。多分この装備は誰も喜んでないと思う。

バトル

GOOD
  • 難易度はHARD推奨
  • ソウルシールドで攻撃をいなす緊張感
  • 最高に気持ちがいいソウルバースト
  • 仲間の存在が心強い
  • 「アクション ✕ 属性」は意外と面白い
BAD
  • 武器バランスが異常
  • 死への恐怖心が薄い

難易度はHARD推奨

本作をアクションゲームとして楽しむなら難易度をHARD以上にすることを強くおすすめする。

標準的な難易度であるACTIONでは脳死でアビリティ連発してても割と勝ててしまうので、ソウルシリーズのように敵と対峙した時の緊張感や強敵を倒した時の達成感を味わいたいのならHARDで挑戦しよう。

もちろんストーリーだけを楽しみたい人なら最低難易度でも全然OK。

ソウルシールドで攻撃をいなす緊張感

ソウルシールドは敵の攻撃をいなしてダメージをゼロにするだけでなくよろめかせたりMPを回復することもできるため、本作の戦闘の要と言える。

ざっくりいうとSEKIROの弾きにかなり近いシステムなんだけど、ガードの延長だった弾きと違ってソウルシールドは使用しているだけでブレイクゲージを消費する。このゲージを失うと体勢を崩してしまい大きな隙を晒してしまうので無闇に使用するのはリスクを伴う。

それに弾き主体の立ち回りが主だったあちらと違い、本作はアビリティで攻めないと勝つことは難しい。MPを回復する手段としてもソウルシールドはかなり重要なためコレを使いこなせないと攻めに転じることも難しい。

攻守どちらにもソウルシールドはかなり重要で体勢を崩すリスクがあるため緊張感が伴う。強敵との戦いにおいてここのバランスが最高にスリリングで楽しい。

最高に気持ちがいいソウルバースト

敵のブレイクゲージを削り切ると体勢を崩して長時間のダウンが得られる。この時発動できるソウルバーストは残りHPに関わらず一撃で敵を葬ることができる技。

結晶化した敵を粉々に砕く演出が最高にバイオレンスで気持ちがいい。口を逆パカしたり、踏みつけたり、バックブリーカーを決めたりとやりたい放題。

ボスは基本的にソウルバーストを二回決める必要があるのだが、一回目を決めた時に挟まれる演出がまたかっこいい。

演出とはいえボス相手にも怯むことなく戦う闘争心むき出しのジャックの姿にプレイヤーも焚きつけられる。苦戦した後のソウルバーストの気持ちよさは筆舌に尽くし難いものがある。

ジャックもにっこり、プレイヤーもにっこり。

SEKIROにも忍殺という似たシステムがあったしアレも爽快だったけど雑魚敵には演出は用意されていなかったし、特別な演出もボスへのトドメの一撃のみだった。戦闘の達成感や爽快感、苛烈な戦いを演出するという意味ではソウルバーストの演出はかなり好印象。

仲間の存在が心強い

十字キーの左右で味方をレゾナンス状態にできる。この状態の味方はアビリティを積極的に使ってくれるので、敵が体勢を崩した時に一気に攻め立てることができるし、特に何かを消費することもなく発動できる。

仲間を魔法職にしておくとレゾナンスの時に補助魔法や回復魔法を使ってくれたりするのでとても助かる。ただ細かい指示まではできないので「今!」ってタイミングで使ってくれない時も多いのが悩みどころ。

それ以外にも戦闘中は仲間同士の声掛けが多いので、一緒に戦っている感覚があってとても好印象。マルチプレイも搭載したゲームシステムであるため一緒に戦う仲間の存在を感じやすいのだろう。

「アクション ✕ 属性」は意外と面白い

本作と同じくアクションゲームとして開発されたFF16には属性の概念が無いため、炎の敵に炎の攻撃を繰り出しても有効になるというRPG作品の多かったFFにしては違和感のあるシチュエーションがあった。とはいえ16はアクションゲームだからそれで何も問題ないと思ってたし、むしろ属性があると邪魔になると考えていたんだけどFFオリジンを遊んでその考えは180度変わった。

オリジンはアクションゲームだが属性相性や物理と魔法の概念がある。プリン系など物理がほぼ効かない敵やボム系など特定の属性が完全無効の敵もいるため、一見アクションゲームとしてはやや微妙に見えるが全然そんなことはない。

その理由のひとつに、物理と魔法が分かれていることで敵によってジョブを使い分ける必要があるため、プレイスタイルが流動的になりマンネリを感じにくいことがあげられる。アクションゲームにおいて戦闘のマンネリ化は致命的で、そこがFF16の課題でもあったのだが本作は敵によって戦い方を変える必要があるためそれを感じにくい。

そしてもうひとつは「属性減衰」というシステムで、これは属性攻撃をし続けているとその属性の耐性が下がってダメージが増加するというもの。つまり属性を使えば使うほどダメージを稼げる。一部のアビリティには属性が付与されているため、属性を意識して戦うとめちゃめちゃ強い。

これだけ聞くとプレイヤーにとってメリットしかないシステムに聞こえるけど、これはプレイヤー側にも適用される。敵の魔法を一度食らって属性減衰状態になると「さっきは大丈夫だったけど、今これを食らったらヤバい…!」という緊張感が生まれるのだ。

属性を使いこなせば戦いを有利に運ぶこともできるし、敵からの攻撃に対する緊張感も生まれる。属性があることによって闘いに緩急が生まれるのだという発見があった。

武器バランスが異常

前途の通りこのゲームは属性を扱えるとダメージを伸ばせる。それが面白さに寄与していることは間違いないのだがそれはとある武器を除いた場合の話。

その武器とは一体何か、プレイした方ならもうお分かりだと思います。

そうですね

斧です

もう断言します、斧がぶっちぎりで最強です。ぶっ壊れと言って差し支えないレベルで強い。

というのも斧の特徴は全ての攻撃で溜めが可能で威力を上げられること。その辺の雑魚ならアビリティを最大まで溜めれば一撃で屠れるかブレイク状態に持っていけるほどに強い。

しかも斧士のジョブボーナスを重ねれば溜め段階が3から4に増えるため更にダメージは伸びる。こうなるとモルボルやマインドフレアのような強めのモブすら一撃で8〜9割のブレイクゲージを削れてしまう。

溜めの時間がかかるというデメリットも赤魔道士のジョブボーナスやアビリティのリィンフォース(タメ時間短縮)を使えば一瞬で溜まるし、ブラッドウェポン(与ダメでHP回復)を同時に使えば溜め中に敵の攻撃を食らってもアビリティをぶっ放せば減った分のHPは軽く取り返せるというトンデモスペック。

一撃に全てを賭けるという戦闘スタイルは嫌いじゃない。俺もモンハンでは大剣もよく使うから気持ちはとてもわかる。でもこれではあまりにも斧が強すぎて「もうコレでいいじゃん」ってなってしまうのは非常によろしくない。

死への恐怖心が薄い

ダークソウルやエルデンリングの雑魚敵がなぜあそこまで恐ろしく感じるのか、それは失うものがあるから。経験値をロストするのが怖いから慎重になるし戦いの緊張感が強まるのだ。だがオリジンにはそれがない。確かに負けたら悔しいしチェックポイントからやり直しなのは面倒に感じる。でも何も失っていないのだ。

経験値の代わりに落とすのはMPの最大値。これを回収すればMPの最大値を取り戻せるのだが、ソウルシールドをまともに使えればわざわざ回収せずとも最大値は上げられる。経験値は敵を倒した時点で加算されるし装備を失うわけでもない。戦闘に負けたとしても戦えば戦うほど強くなるため、死にゲーとしての魅力は少々薄い。

だからこそ俺はソウルのように恐る恐る前に進むということをすることなくプレイしてくることができたし、ダンジョンも何も怖がることなく探索することができた。それが良いのか悪いのか言い切るのは難しい。ただ俺はほんのちょっとだけ物足りなさを感じてしまった。

ストーリー

GOOD
  • 「FF1」のパラレル前日譚
  • 終盤の盛り上がりがエグイ
  • 最高のダークヒーロー
BAD
  • 主題歌に和訳が無い

「FF1」のパラレル前日譚

主人公はPVでも判明している通り、FF1の最初のボスであり最後のボスでもあるガーランドこと「ジャック=ガーランド」本人。本作では彼がなぜ混沌の魔王として君臨していたのか、その目的と過去について描かれる。

シリーズの始まりであるFF1の世界を深掘りする内容であると同時に、まさかの悪役が主人公という着眼点に胸が躍る。ガーランドがセーラ姫を攫った理由まで明かされるため初代を知る人には堪らない展開だろう。

セーラ姫を攫った理由

(ネタバレ注意)

この二人、まさかまさかの恋仲だったことが明かされた。映像から察するにジャックはセーラ姫の護衛の騎士として生きた世界線もあったらしく、昔からあった「元コーネリアの騎士」という設定を活かしている。

彼女を攫ったのもジャックと交わした約束だった。何か思い切ったことをしないとこの世界は何も変わらない、そのために何をするのかと問われたジャックは、微笑みながらあなたを攫って逃げると答え、それに微笑み返すセーラ姫。

セーラ姫は黒水晶を失ったことですべてを忘れてしまうが、すべての記憶を取り戻したジャックは記憶の中の彼女との約束を果たす。

ガーランドお前…(悶)

恐ろしく異質すぎる序盤

ネットで散々イジられてきた世界観から浮きまくった服装については、確かに違和感がすごいけどそこまで気になるものでもなかった。

「FFラーメン」と揶揄されているのも、おそらくその異様な絵面だけが一人歩きしてネタにされたのだろう。これに関しては不当に評価を落とされている印象が拭えない

それよりも気になったのはイヤホンをつけて爆音でヒップホップを聴きながらカオス神殿を後にしていたこと。服装なんかよりもファンタジーの世界にスマホとイヤホンという文明の利器が存在するというのは違和感通り越して面白かった。

とはいえコーネリアの街には自動改札機のようなものすら存在しているくらいなので、スマホくらいあってもおかしくないのかもしれない。

もちろん、この世界がなぜこんなにも歪な形で存在しているのかは、きちんと理由があるのだが…。

終盤の盛り上がりがエグイ

具体的には4体のカオスを倒した後からの展開、ここからが超~面白い。

序盤で世界観を受け入れられなかった人や中盤でダレてリタイアしてしまった人が、この物語に触れられなかったことが悔やまれる。

というのもここまではクリスタルを開放して世界を覆う闇を祓うための旅だったのが一気に物語の質が変わるんだ。ガッツリ王道ファンタジーだったものが一気にSFに方向性を変え、怒涛の展開を見せてくれる。

ネタバレ注意

王道ファンタジーの皮を被ったSF

本作のストーリーを簡潔に表すなら、コーネリアを影から操るルフェインの支配からの脱却。忘却と輪廻を繰り返す虚無の世界から抜けだすことにある。

コーネリアではルフェイン人によって世界の光と闇の均衡を保つための様々な実験が行われていた。その一環で異世界から送り込まれた調整弁の役割を果たす者達がジャック達「ストレンジャー」

そしてルフェインはその実験が失敗するたびに「再創生」つまり世界そのものを消し去り、また新たに世界を生み出すという人道を外れた実験を繰り返していた。

つまりルフェインにとってコーネリアは巨大な実験場のようなものでしかなく、そこに住まう人々も単なる実験動物くらいにしか考えられていない。

光の戦士の証として認識されているどう見ても禍々しい黒いクリスタル。この黒水晶の正体もルフェインから与えられた記録デバイス。

混沌の闇を吸収する装置であると同時に、ストレンジャー達の記憶を抜き取りルフェインの意のままに操るための装置だった。

ジャック達の記憶も実験が失敗する度に削除され、大切だった仲間のことや交わした約束も全てを忘れ「カオスを倒したい」という植え付けられた感情に突き動かされながら、何度も何度も同じ時を繰り返してきた。

アストスの目線で描かれた、忘れることができない者と必ず忘れてしまう者が交わした約束には胸が締め付けられる。

絶望と虚無を無限に繰り返してきた彼らのことを思うと、アストスが独り抱えていた闇も、最終決戦においてジャックが露わにした怒りも、どうしようもなく共感してしまう。

最高のダークヒーロー

ジャックの二面性が魅力

美形主人公が多いFF作品において金髪ボウズの強面おじさんというキャラクターはかなり異色で目を引く。性格もかなり好戦的で「戦わない俺に価値はない」と豪語するほどに闘うことが大好きで、魔物や敵を容赦なく粉々に粉砕するその姿はまさに戦闘狂。

闇に覆われたクリスタルを解放するため光の戦士として旅立ったジャック達だが、笑みを浮かべながら魔物を蹂躙するその姿はとてもヒーローとは呼べたものではない。どんな強敵と対峙してもピンチに陥ったとしても「面白くなってきた」と言い、まるで飢えを満たすように戦いを楽しむ姿には狂気を感じる。

一方で仲間達や彼を知る人間からは信頼を寄せられており、街が魔物の脅威に晒された際は自ら最前線に立ち人々を守ろうとしていたことから、口は悪いが根は優しい正義感のある人間であることが分かる。

異色すぎる風貌と主人公らしからぬ荒々しい言動とそんな外面とは裏腹に正義感の強い頼れる男。人はそんな二面性に惹かれるものだ。しかし彼の本当の魅力はその強すぎる正義感ゆえの自己犠牲の精神にある。

必要悪という存在

ネタバレ注意

仲間との記憶も抱いた感情も全てを忘れ無限に繰り返される虚無の世界。その輪を抜け出すための策こそが、ルフェインも制御不能の「カオス」となり世界を闇で染め上げること。

カオスは再創生の影響を受けないため、ルフェインの支配から脱するにはそれしか方法がなかった。そして幾度も時を廻り蓄積されたジャックの闇が友の導きによって最強のカオスとして顕現した事で、ルフェインはやむを得ずコーネリアから手を引く事になる。

虚無の世界から闇の世界へと変わり主導権がジャック達に委ねられ、彼らは「光の戦士」を育てる計画を立てる。いつか自分たちを倒せるほどに強く、コーネリアを正しい未来へと導くための希望の光とするために。

そのためにジャックは悪役を演じ、いずれ生まれるか弱い光を見逃さないために世界を深い闇で染め上げる。そしてFF1の世界へと繋がっていく…。

必要悪というべきか、世界のための自己犠牲という精神に強く心を打たれた。ジャック達がカオスとなって世界を闇で覆ったのは、私利私欲とか支配とかそんなどうでもいいものではなく、全てはコーネリアという世界の未来のためだったのだ。

徐々に育っていく光の戦士との闘いをジャックはきっと心から戦いを楽しんでいた。自ら育て上げた光の戦士との闘いの中で死んでいけたならジャックも本望だったのではないだろうか。

こんな悪役を好きにならない人がいるだろうか。いやいない。

ガーランドは本当にカッコいい。大好きだ。

主題歌に和訳が無い

エンディングで流れる「MY WAY」は1969年に発売されこれまで様々なアーティストにカバーされ愛されてきた名曲(俺は知らなかった)。イントロから漂う哀愁と昔を懐かしむような情景が浮かぶノスタルジックな素晴らしい曲で一度聴いただけですぐ気に入った。

この歌詞がジャックの心情や生き様に通ずるものがあるとして本作のエンディングに選ばれたのだが、エンディングには歌詞はおろか和訳すら無いので何を歌っているのか全く分からない。

ゲームが終わった後で歌詞の和訳を読んだんだけど確かにジャックに通ずるところが多い。選曲は間違いなく正しいのにエンディングでそれが全く伝わらなかったのが非常に勿体無い。

FF7リメイクやリバース、メタルギアやデスストランディングのエンディングも洋楽だったけど、ちゃんと和訳があったし作品の内容ともリンクする歌詞で物語の締めくくりとして素晴らしかった。

もしデスストランディングのエンディングに和訳が無かったらどうだろう。少なくとも俺は納得できない。エンディングをカットする金曜ロードショー並みの不快感。それくらい残念。

DLCについて

総合評価
( 5 )
GOOD
  • 歯応えのあるボスとの戦い
  • ハクスラ要素が息を吹き返す
BAD
  • ストーリーだけを求めてる人には向かない

歯応えのあるボスとの戦い

DLCのボスはストーリーで戦った敵が全員かすむほど強い。わかりやすく言うなら基本2発KO。それくらい敵の火力が高いけど、クリアした時の達成感もひとしお。

ボリューム自体はそこまでだけど追加される要素を考えると、これで2750円は安いと思う。

ネタバレ注意

ついに現れた光の戦士との戦い。

次元の迷宮では次元の迷い人や

機械の兵器(こいつが一番強かった)

ルフェインとの決着と

異世界(おそらくディシディアの世界)から来た皇帝との戦い。

そして光の戦士としてガーランドを倒す…。

まさかまさかの最後のボスは自分自身という。その強さに驚くことだろう。

ハクスラ要素が息を吹き返す

第二弾の次元の迷宮に入ると装備合成が開放され、気に入った装備のスキルやジョブボーナスを他の装備に移植できるようになる。

このおかげで装備を集めるのが格段に楽しくなった。正直最初からあっていい機能だと思う。

ストーリーだけを求めてる人には向かない

前途の通りかなり難易度が高いため本編のストーリーを気に入って単にその続きを求めている人にはあまりお勧めできない。DLCでは難易度を下げることもできないから、本編の時点で難しいと感じていた人にはなかなか厳しいだろう。

ただDLCで描かれる物語はかなりアツいので、物語を気に入った人にはどうにか頑張って挑戦してもらいたいところ。

日の目を浴びなかった良作

惜しい、とても惜しい。

こんなにも面白いゲームが埋もれてしまっていることが悲しくてしょうがない。

FFラーメンなんて揶揄されて笑われているのが悔しくてたまらない。

世間の評価 ≠ 自分の評価

この作品の評価は不当と言えるレベルで芳しくない。各所では物語の導入が意味不明すぎるというレビューが散見されるのも確かにその通り。いきなり私服の男が出てくるしイヤホンやスマホまで持ってるから世界観がカオスすぎて俺も混乱してた。

だけどそれはちゃんと後半まで遊べば分かるようには作られている。問題はそこまで辿り着けるプレイヤーが少なかった事と第一印象でネタにされすぎた事だ。

おそらくそんなレビューを見て敬遠していた人もいただろう、俺もそのうちの一人だ。しかし前評判だけで食わず嫌いするのは非常に勿体無いということをここでハッキリと言っておきたい。

自分でプレイしようともせず誰かの評価を鵜呑みにして「このゲームはクソ」と断じてしまうのはネガキャンと同じだ。あくまで他人の感想は参考程度に留めておいて、面白いか面白くないかは自分で確かめて判断するべき。

そうしてきたからこそ俺はこの素晴らしいゲームと出会うことができた。俺はこれからも続けていくつもり。

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