【「ELDEN RING」レビュー(ネタバレ)】ソウルシリーズの完成系。フロムが贈る超大作ダークファンタジー。

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総合評価
( 5 )

2022年2月25日。フロムソフトウェアの死にゲー「ELDENRING」が発売された。多数の積みゲーに阻まれて全くプレイすることができず、約2年を経てようやくここに漕ぎつける事ができた。

直前までテイルズやFF16、FF7リバースといったRPGにどっぷり浸かっていた俺は、開始からわずか10分でフロムの洗礼を受け、狭間の地の厳しさを知ったと同時に死にゲーの恐ろしさを思い出した。

結論から言うと本作は間違いなく傑作。隅から隅まで味わおうとすると時間がいくらあっても足りないほどのボリュームがありながら欠点らしい欠点も見当たらない。フロムの超大作、ここに極まれり。

というわけで、今回は「ELDEN RING」(以降エルデンリング)をレビューしていこうと思う。

この記事の目次

ソウルシリーズの完成形

エルデンリングはフロムがこれまで展開してきたソウルシリーズと、それに連なる作品の集大成であり完成形だ。

なんて偉そうに言ってるけど筆者のフロムゲー歴は全然浅い。ダークソウル(無印)、Bloodborne、SEKIROのたった3つと俺の引き出しは少ないがそんな俺でも分かる。エルデンリングはソウルシリーズの遺伝子を継いだ傑作だ。シリーズの基本を継承しつつ、そのゲーム性には確かな進化を感じる。

その評価は世界中のゲーマーのお墨付きで2023年のGOTYに輝いているほどで、合う合わないの好みはあれど逆張りでもエルデンリングをクソゲーだと叩くのは難しい。

シリーズ初のオープンワールド

もともとソウルシリーズはロードを挟まないセミオープンワールドのような形をとっていたが、今回は完全なオープンワールド。

舞台となる狭間の地の各地には従来のようなレベルデザインされた大小さまざまなダンジョンが存在し、それらを繋ぐ複数の広大なフィールドが用意されている。

プレイヤーが初めて降り立つのはリムグレイブ。眼前に広がるのはどこまでも続く世界と、切り立った崖の上に聳える城。そして煌々と輝きを放つ巨大な黄金樹。

ここまでゲームを始めて僅か10分程度だが、世界観に圧倒され心を鷲掴みにされたのをよく覚えている。

探索欲をそそる広大な世界

本作に決まったルートは存在せずはじめからどこへ行くのも自由で、遠くに見える塔や遺跡、砦や城には実際に歩いて行くことができ、プレイヤーの思うがままにゲームを進めていくことができる。

マップ上に点在する建造物や、岩陰の洞窟などにはほぼ必ずアイテムや武器、回復アイテムの強化といった「報酬」が用意されており、拾ったアイテムのフレーバーテキストからこの世界のことを断片的に知ることもできる。

なかにはNPCとの出会いもあり、サブイベントがいきなり始まるなんてこともしばしば。当然それらの途中では強敵との戦いもあるため、プレイヤーは何度も何度も死にながら成長を繰り返し強くなっていく。

プレイヤーは探索を通して自分のプレイスキルとキャラクターのステータスを強化できるだけでなく、この謎に満ちた世界を少しずつ知ることができる設計になっていて、探索の楽しさとプレイヤーへの報酬のバランスが最高だった。

馬という新たな移動手段

とはいえオープンワールドは広い。最初のマップのリムグレイブでさえとんでもない広さを誇るため、歩いて旅するのは流石に骨が折れる。ゲーム的にも何らかの足が必要になるのは必然だった。

そんなこんなでシリーズで初めてプレイヤーに乗り物が与えられることとなった。霊馬トレントは指笛で召喚できる。拠点やダンジョンを除く多くの場所でお世話になることだろう。しかもこの子は2段ジャンプができるので、多少の起伏程度ならひょいひょいと飛び越えられるので探索がかなり捗る。

馬上での武器の使用も可能なので騎馬戦も可能。もしピンチになっても大抵の敵は走ってぶっちぎれるため逃走手段としても活用できる。ただし熊からは逃げられない。

トレント用の回復アイテムを手のひらに乗せて食べてくれるのもかわいい。しかし間違って高いところから落ちて死なせてしまった時の罪悪感もひとしお。聖杯瓶ですぐに復活させられるけども、動物が傷つくのは心が痛む…。

大切に、してあげてほしい

メリナさん、ごめんなさい。

豊富なファストトラベル

オープンワールドの快適さに直結するのはファストトラベル。今作ではシリーズお馴染みの回復ポイントがその機能を備えている。

回復ポイントに飛べるのはもはやシリーズお馴染みと言ったところだが、本作で驚いたのはその数。

ストームヴィル城など従来のように作り込まれた拠点は例外だが、フィールド上にはありとあらゆるところに回復ポイントが存在する。ひとつ見つけて少し進めばまた見つかってという具合で、ファストトラベルする場所には全く困らない。

しかもダンジョンの中でも非戦闘中ならいつでもファストトラベルが可能。だから進むのがキツくなってきて経験値を一旦持ち帰りたい時に、ノーリスクで帰ることができる。めちゃめちゃ便利。

ただひとつ例外なのは洞窟、ここではファストトラベルができない。転送罠にかかった直後はまだしも「やっぱ帰りたい…」ってなったときも逃げられない。

基本はそのままに遊びやすく

ジャンプができる

今作ではなんと…ジャンプができる。何をアホなことを思うだろうが、ソウルシリーズは長年ボタンひとつでジャンプができなかったのだ。

本作の操作感をめちゃめちゃ簡単に言うと「ソウル+SEKIRO」といったところで、基本的にはソウルシリーズと同じなのだが、◯ボタンでダッシュ、✕ボタンでジャンプ、L3でしゃがみといったところはSEKIROと同じ。

一部の攻撃はジャンプで躱してそのまま空中攻撃をお見舞いしたり、しゃがみ移動でバックスタブを取りやすくなったのでプレイイングの幅が広がった。これは非常に大きな進化と言えるだろう。

落下ダメージに寛容になった

大きな進化といえば、高所からの落下ダメージにかなり寛容になったのも忘れてはないけない。ソウルシリーズは基本的に平坦なマップ構成で、順路を無視して段差から落ちるとダメージを喰らっていた。

葦名の狼ほどではないがロードランの不死人、ヤーナムの狩人よりも狭間の地の褪せ人は圧倒的に落下ダメージに強く「この段差でダメージ喰らうのかよ」というストレスはほぼ無くなり、探索がかなり快適になった。オープンワールド化に伴いフィールドには起伏も多くなったため、その調整という面もあるのだろう。

しかし逆に落ちたら死ぬ高さが分かりにくくなったのも事実。高所からの落下に慣れてしまい「これくらいならいけるだろう」って思っていたら、トレントと褪せ人の断末魔を聞くことになったプレイヤーも少なくないと思う。

「遺灰」による数的有利

ソウルシリーズの基本は一対一だが、時には多数の敵を同時に相手取らなければならないシチュエーションもある。一対多数の戦いというのはかなり厳しいところがあり、雑魚ならまだしもボスともなると手がつけられない。

ダクソ1の「オーンスタイン&スモウ」や今作の「神肌のふたり」がそれにあたる。隙をうかがって攻めあぐねていたらジリ貧になってタコ殴りにされるのがテンプレ。

そんな時には遺灰を使って味方を召喚する。遺灰には人型や犬、クラゲなど様々な種類があるため、自分の好きなものを選べる。大抵の場合すぐにやられてしまうが、ヘイトの分散が可能という面では立ち回りがかなり楽になる。

これまで同様にNPCの召喚も可能だが、なぜか知らないけど俺の世界には召喚サインが全く現れなかった…。遺灰のおかげで数的有利を作り出せる事で立ち回りが楽になり、何よりも仲間がいる安心感はソロプレイばかりの俺にとってかなり新鮮なものだった。

育成の自由度が大幅に増加

ステータスの振り直しが可能

ダークソウル3から導入されたシリーズ的には割と新しい要素で、ここを通って来なかった俺にとっては革新的な要素だった。

ゲームを進めていくと特定のアイテムを消費して「生まれ直し」が可能で、これまで振り分けてきた経験値を再度振り直す事ができる。回数制限はあるもののプレイスタイルを大幅に変更することが可能なので、脳筋戦士から魔術師に転職することもできる。

ダークソウル1もBloodborneもステータスの振り直しができなかったので、使ってみたい武器があってもステータスが足りず泣く泣く使用を諦めることもあったが、今作ではその心配をする必要は無くなった。

「戦技」や「派生」の変更が自由

武器ごとの固有技だった「戦技」を任意の武器に付与することができるようになり、上質、鋭利、重厚などステータス補正も変更も可能。これまで変質には専用の強化アイテムが必要だったが、それも無くなり武器強化の方向性が気軽に変更できるようになった。

だから脳筋戦士プレイをしている人が刀のような技量補正の高い武器を使いたくなっても、何も失わず気軽に重厚派生に変更して使用することもできる。

ソウルシリーズはこの辺りが少し分かりづらかったので、シンプルに分かりやすく変更してくれたのはありがたい。武器の変質も気軽にできるので、生まれ直しと合わせて様々なプレイスタイルを試してみようという気持ちにもなれる。

序盤の正念場はストームヴィル城

決まったルートは存在しないが、おそらく多くの人が最初に訪れる事になるダンジョンはストームヴィル城になると思う。難易度的にも序盤にあたるダンジョンなのだが、個人的にはここをクリアするまでが一番苦しかった。

というのも、この時点ではまだまだ武器の強化やキャラの育成もできていないからHPも少ないし、回復できる回数も量も少ないから、とにかく敵の一撃が重い

だけどここさえ超えれば大丈夫。徐々にレベルも上がり探索範囲も広がるため、新しい武器を見つけたり回復の量や回数も増えてくる。なによりプレイヤーの成功体験と成長も大きいところだろう。

苦しい戦いを潜り抜けた先に、まだまだ広がりを見せる世界がプレイヤーを待っている。ワクワクは止まらない。

デミゴッド達はかなり強め

本作の大ボスにあたるデミゴッド達は、ゲーム的にも世界観的にもかなり強めな設定となっている。デミゴッドはこの狭間の地の神?である女王マリカの血を分けた子供達のこと。

「デミ」はフランス語で「半分」「部分的に」という意味だそう。半神とはいえ神の力を宿しているその設定に違わず、全員揃いも揃って鬼のように強い。

デミゴッド達には漏れなく第二形態が用意されており、HPを半分ほど削るとムービーと共に第二形態に移行する。行動パターンが変わり新しい攻撃モーションも見せてくるため、大抵初見では何もできずに死ぬ事が殆ど。ブラボDLCのルドウイークみたいな奴が何体もいると思ってもらえると分かりやすい。

ラスボスも実質二連戦でかなりの苦戦を強いられた。他作品だと大抵その日のうちにクリアするんだけど2時間ぶっ倒しで負け続けたのはエルデンリングが初めだったし、数日に渡って闘いが長引いたのも初めてだった。

なかでも凶悪だったのはマレニアさん。攻撃を食らうと敵のHPが回復するというトンデモ仕様。必ず倒すボスではないもののこれはイカれてる。しかもこいつもHPゲージを全て削ってから第二形態に移行するため実質2連戦となる。全く勝てる見込みが無かったので投げてしまったがいつか再挑戦する予定。

とはいえ徐々にクリアに近づいていく高揚感や後少しで負けてしまう焦燥感、それらに打ち勝ってクリアした時の快感もひとしお。デミゴッドとの戦いはこれまでのシリーズのどのボス達よりも緊迫した戦いが楽しめるだろう。

ストーリーの目的などが説明不足

と、ここまで絶賛してきたのだが、個人的な不満点が一つだけある。といってもこれはエルデンリングに限った話ではなくフロムゲーの殆どに言える事なのだが、これらの作品はストーリーの主目的や次にどこ行けばいいのかが全く分からない。

俺自身フロムゲーのストーリーは分からなくても些細な問題だと思っていたので大して気にしていなかったのだが、プレイしていたのを隣で見ていた彼女に「何が目的のゲームなの?」と聞かれて、「エルデの王になるゲーム」という曖昧な返答しかできなかった。

「二本指ってなに?」
「エルデンリングってなに?」

そんなものは知らん!!!

フロムゲーは前からこういうところがある。らしさと言えば聞こえはいいが…。

ダークソウルではロードランの巡礼を許され北の不死院から旅立ったが、それが何を目的としているのかが全く理解できなかった。

Bloodborneは最初から最後まで何一つ理解できず、何が何だか分からないうちにラスボスを倒してゲームが終わったほど。

SEKIROだけは物語がスッと入ってきた。主人である御子を取り戻し、その願いを叶えるという分かりやすい目的が最初に提示されたからだろう。

エルデンリングもまた「エルデの王になる」という目的が最初に提示されるのはSEKIROと同じだが、その手段、つまり「王になる」というのがどのような存在でどうやってなるのか、それが全くわからなかった。

フロムゲーは理解しようとする事が間違いなのかもしれない。あとは啓蒙の高い考察系のYouTuberに任せよう。

2022年製にしては不親切すぎるUI

イベントの進行状況がわからない

これも昔から。今何のイベントが発生していて、次に何をしたらいいのかが全くわからない。メインはなんとなく分かるけどサブは特に分からない。

やりかけのサブクエストを忘れたまま放置してしまうなんてことはザラだし、イベントの中間にある会話を抜かしても進んでいくから話についていけずプレイヤーが置いてけぼりになってしまう。

一緒に戦っていたはずのNPCが次に会った時にはなぜか暴走して敵対、そのまま戦って死んでしまったり。

「◯◯にこれを渡してくれ」とか「◯◯に会え」とか言われても、どこにいるのかわからず放置してしまい忘れてしまったり。

しばらくしてから思い出してまた探そうと思っていたらフラグが消滅していたり。終わったと思ったイベントが知らないうちに続いていたり。かと思えば対象のNPCが死んでしまって進行不可になっていたり。

あくまでもプレイヤーが自分で探索して発見することを大切にしているのは理解できるんだけど、このままではあまりにも不便。

初見で自分で見つけるという体験が大事なはずなのに、攻略サイトがないとまともにイベントを全部追えないのでは本末転倒だ。

そう考えるとブレワイのUIはめちゃめちゃ良かった。達成するべき目的「ガノン討伐」が最初に表示されて、その間に発生したサブイベントが一覧で確認できる。だからゲームを楽しむためにも、最低限でいいから進行中のイベントやタスクの表示は欲しい。

重厚な世界観と極上の死にゲー体験

2009年のデモンズソウルから始まったソウルシリーズ、そしてそれに連なる外伝作品たち。それらの遺伝子を受け継いで生まれたエルデンリング。

神秘的かつ退廃的な美しい世界観で心の赴くままのゲームプレイ。そして圧倒的強者との戦いとそれに打ち勝つ達成感。シリーズの基本はそのままに遊びやすく進化し、2022年、ついにフロムの死にゲーは完成した。

ただ攻略サイトありきのイベント進行の分かりにくさやタスクの表示が無いことなどは、フロムゲーらしさとはいえそろそろメスを入れてもいい頃なんじゃないかとは思う。

間違いなく傑作だった。死にゲーに興味のある人やこれまでシリーズに触れて来なかった人、名前だけは聞いた事あるよって人にも是非とも遊んでほしいと思える一作だ。

このゲームの面白さが、死にゲーの魅力が一人でも多くの方に伝わり、実際に遊んで有意義な体験ができることを願っている。

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