【「テイルズオブアライズ:Beyond the Dawn」】2.下がる期待値と穴埋め感
約2年越しに発表されたテイルズオブアライズ大型ストーリーDLC【Beyond the Dawn】今回も前回に引き続き、これに関する新たなインタビュー記事と共にPVを見ていきたいと思う。
前回の記事からしばらく経ち公式からの情報も少しずつ出てきて、なんとなく今回のDLCの全体像が掴めてきた。
アライズの本編は描写不足とご都合主義の目立つ作品だっただけに、今回のストーリーを補完するDLCには期待しているんだけど、結論から言うと現状では本編の穴埋め感が否めないうえ、期待値がどんどん下がっている状況。
では今回は公式の記事を引用しつつ、なぜそう思っているのかを解説していきたい。
世界が認めたって何ですか?????
ストーリーの補完は悪手
今回のDLCが後日談であることは告知されていたが、その詳しい時系列が明言された。
本作の時間軸は、本編ラストバトルの後、スタッフロールの最後のシーンよりも前の、そのあいだの時点の物語です。つまり、アルフェンとシオンが幸せな形を迎える前に起こった出来事を描いています。
後日談というと本編の物語が終了した後を描くものだと思っていたが、これは違うらしく、ラストバトルからあの結末との間にある物語。世界を一つにした後に起こりうる問題を描くとのこと。
エンディングより前の物語を後日談と呼んでいいものか疑問だが、はっきり言ってこれは心象が良くない。
というのも、そんなものは本編でいくらでも描ける機会はあったのに、それを切り離してDLCという形で販売するの事への抵抗が拭えないからだ。
一番許せない続編のパターン
本編をテレビアニメシリーズにたとえるなら、今回のDLCは、テレビアニメシリーズのその後を描く劇場版をイメージしていました。
アニメシリーズの続きを描いた劇場版。完結した世界の続きをもう一度見られる楽しみはとてもよく分かる。前日譚や後日談が加われば物語に深みが出て、より作品の魅力が増すだろう。
だけどそれは、一度完結した後の世界で起こる「新しい問題」を描く場合の話だ。
今回のDLCで描かれるのは世界を一つにした後に起こりうる様々な問題。ラストバトルからエンディングのアルフェンとシオンの結婚式までの空白を埋めるものだ。
これが完結した世界の続きを描くものとは言い難い。本編とは異なる新しい問題とも言えないし、むしろ本編で起こりうる問題を放置していたものがDLCとして発売されるため、ストーリーの切り売りをしているという印象が拭えない。
「ファンからの声」という言い訳
そもそもの話、なぜ今更DLCが作られたのかについてだが、インタビュー記事を読んだ限りどれも体のいい言い訳にしか聞こえなかった。
反響は多くいただいていましたし、販売本数もおかげさまで成功と言えるレベルに到達していたこともあり、チーム内でも「DLCで追加エピソードを作りたい」という声は上がりました。
「キャラクターたちのその後が知りたい」というファンの方々の意見が多かったのも理由のひとつです。
そりゃそう。あんな雑に風呂敷を畳まれたらプレイヤーも気持ちよくスッキリと終われるわけがない。
40時間、50時間とプレイヤーはアルフェン達と共に旅をしてきた。当然キャラクターへの思い入れもあるから、その旅の結末を見届けたいと思うのは必然。
しかしエンディングで提供された結末は二人が幸せになったという事だけで、自分達が救ったはずの世界がどうなったのかを見届ける事はできなかった。
描くべきものを描かなかった本編
本編が終了した時点の新しい世界に問題が山積みなのは火を見るより明らかだった。
ダナとレネギスに住まう人々の理解を得る事もなく一つになった世界。昨日まで敵視していた人間と否が応でも共に暮らさなければならない。そしてそこで起こりうる住居問題、差別、迫害といった問題の数々。
そういった少し考えれば誰でも疑問に思う多くの問題をこの世界は抱えているはずなのに、そういったものに一切触れられるはなく、二人は結婚式を挙げて無理矢理に近いハッピーエンドで物語は幕を閉じた。
その全体像は埋まっていないピースがあるにも関わらず、これで完成と言われてしまったジグソーパズルのよう。
想像の余地ではなく描写不足
これは『テイルズ オブ』シリーズの共通点ですが、本編のストーリーが終わってもキャラクターたちの人生は続いています。そこを想像したくなるような作品にすることは、『テイルズ オブ アライズ』でも狙っていたことでした。
物語が終わった後も続いていくキャラクター達の人生。それを想像する楽しみはとても理解できる。
だけどそれなら平和になった後の世界を想像するのが自然。ファン達の「続いていく人生を見たい」「その後が知りたい」という声に応えるのならエンディングの後を描くのが自然だ。
にも関わらずそうしなかったのは、問題を放置したまま物語を終わらせた事に対する購入者からの反響が大きかったからであって、決して前向きな理由ではないのは容易に想像がつく。
ファンの「その後が知りたい」という声に応えて製作したと肯定的に言っているけど、本編の結末が描写不足だったから今回DLCで補填しただけにしか思えない。
ただの描写不足をさも想像の余地を残したように言われても、事実そこが想像で補える範疇を超えていたから「キャラクター達のその後が知りたい」という声が出てきたのではないか。
本編は「読後感の良さ」が無かった
『テイルズ オブ アライズ』は当初から、本編だけで読後感のいいストーリーをお届けすることを目標にしていました
これもツッコミどころ満載なんだけど、そもそも読後感がよければストーリーのDLC作らない。
加えてこれは本編の発売前の記事にはなるが、過去にはこのような発言もあった。
プレイヤーがそれまでやってきたことに対しての納得感を提供することが、ゲームでいうところの読後感のよさだと考えています
「プレイヤーがそれまでやってきたことに対しての納得感」が提供されてません。あの結末でこの目標がが達せられているとは考えられない。
もちろん二人が幸せになる事は喜ばしいことだけど、そこに至る過程は到底納得のいくものではなかったのは強調しておきたい。
バットエンドが悪いというわけではなく、必然的にユーザーさんが受け止められる内容のものであることこそが一番大事なのかなと。そこに差が生まれてしまうと、どんなエンドであれ、やはり納得がいかないと思います。
ダナとシオンを救うために戦っていたはずが、自分の甘さが原因でシオンを救えなくなってしまった。かと思えば、ほんの思いつきでシオンもダナもレナも全部救いたいと言い出して、アルフェン達がそのために積み上げてきたものも無いままに、ただ祈って本当に全てが救われてしまった。
どう解釈しても、どうしてもシオンを救いたかっただけでついでに世界を救った感が否めない。世界を救ったという自称に対して「プレイヤーがそれまでやってきたことに対しての納得感」が1ミリもないから受け止められるわけがない。
前途の引用の通りこんな事は製作陣も分かっていたはずだが、まず大前提として読後感が良い=ハッピーエンドではない。
バッドエンドだとしてもストーリーを終えた時にプレイヤーが納得できるものである事が重要だ。その読後感が非常に後味の悪いものであったとしても、それがプレイヤーの行動による結末であれば、これはそういう作品だったと受け止める事ができる。そのあとは好みの問題だ。
製作陣はとにかくハッピーエンドにこだわりすぎたために、ここを疎かにしてしまったと言わざるを得ない。
アニメパートが無いのは英断
今回は3Dモデルの演技に注力してドラマを描いていまして、2Dの新規アニメーションはありません。
これはいい判断。
本編のような中途半端なアニメーションを付けるくらいなら最初から無いほうがいい。むしろ今作はCGの出来が良いから3Dモデルで十分。
戦闘に追加要素が無いのは残念
バトルシステムや成長要素などは、基本はそのままです。
「お前、前の記事で戦闘はどうでもいいって言ってたやんけ。」って言いたい気持ちはすごいわかる。俺がアライズのDLCに期待しているのはあくまでストーリーだから、戦闘などのゲーム性がどうであれ問題はないと思っていたんだ。
だけど本編のゲーム性に不満があったからこそ今回のDLCで改善や新要素があれば、それによって俺の不満が解消されて素晴らしいゲーム体験ができる可能性があったかもしれない。そう思うと残念でならない。
本編でご好評いただいた手触りはそのまま維持しつつ、敵の行動やブーストアタックの効果範囲など一部調整をさせていただいています。追加の称号とスキルはありませんが、武器・防具は用意しています。
ナザミルはプレイアブルキャラとしての参加・育成はできません。
やがてアルフェン達と対峙する運命にありますが、アルフェン達の旅に同行している間は、スキット/イベントシーン/野営シーンなどで登場します。
今作においては称号が増えない=技が増えないと同義。スキルも増えないから立ち回りが大きく変わることもない。さらにさらにせっかくの新キャラであるナザミルは操作も育成もできないNPCで最終的には敵対する設定。
戦闘システムは本編と全く変わらない操作感で代り映えしないし、せっかくの新キャラも操作できないしいずれ離脱するからきっと愛着も湧きにくい。
ゲーム的な新しい体験や楽しさはほぼ無いと言っていいだろう。
いっそアニメでいい気がしてきた
今回はドラマを楽しんでいただくことをメインにしていて、バトル要素は本編通りの楽しさを少しだけ最適化しました。
たとえばマンガや小説など、何かしらの形でお届けできたらいいなと思っていたのですが……本編発売後、多くの方々から「彼らの活躍をもっと知りたい」という声も多くいただきまして。ファンの皆さんの期待が本当に熱かったおかげで、今回はゲームとしてお届けすることになりました。
あえてこのように明言しているのはそれだけストーリーに自信があるということだろうか。アクションRPGの目玉である戦闘に新しい要素がないのを見ると、今回はただただストーリーの穴埋めがしたかっただけなのが伺える。
というか、単にストーリーを見せたいだけならゲームじゃなくていい気がしてきた。
本編にプラスされる追加要素を作るならストーリーや演出だけでなく遊びの面でも追加要素があるべきだし、仮にも税込3960円と決して安くはない価格設定だ。
ゲームとして売り出す以上「遊び」として新しい体験があってもよかったと思う。
DLCは付加価値であるべき
あくまでも今回のDLCの悪印象が拭えないのはストーリーの切り売り感が問題だからだ。
もしも本編のエンディングが
「俺たちの旅は続いている〜」
「まだまだ問題は山積みだけど〜」
「シオンと一緒なら〜」
といったものなら「続きが気になる」という声に応えて今回のDLCが発売されるのも頷ける。そしてDLCのラストで2人が結婚すれば、何のしこりも無く大団円を迎える事ができたはずだ。
それがハッピーエンドに拘るあまり、描くべき問題をすっ飛ばして無理やりアルフェンたちをくっつけてしまったために、今回のDLCの展開の仕方も相まって悪印象を招いてしまった。
DLCは付加価値であるべきだ。 本編で「10」楽しめるものに「2」のDLCを加えることで合計で「12」の価値を与えるものであって、「8」の本編を「2」のDLCで補完して「10」にしますなんて言語道断。
しかも特別これといった新たな体験や遊びも無い、ただストーリーを見せるためだけのものなんて、ますますゲームでやる必要性を感じない。
期待値は下がる一方だが、ここまでこき下ろして実際にプレイしないのはさすがに筋が通らない。テイルズシリーズの一ファンとして、最後まで見届けるつもり。あとはのんびりと発売を待つことにする。