【「FINAL FANTASY XVI」レビュー(ネタバレ)】硬派なFF。本格アクションとヘビーな物語。

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総合評価
( 4 )

2023年6月22日、待ちに待ったファイナルファンシタジーの最新作「FINAL FANTASY XVI」(FF16)が発売された。

前作から約7年ぶりの新作であるFF16には個人的にかなり期待をしていたし、同じだけの不安も抱えていた。大好きなシリーズだということはもちろん、前作があのザマだったので次こそはと願わずにはいられなかったのだ。

そんなこんなで発売日を迎え購入したわけだが、先に結論を言うと多少の粗はあるものの、かなり満足度が高いゲームでFFシリーズの復権は成ったと言っていい。

合計80時間プレイして感じたFF16の良い所と悪い所を、それぞれ解説していこうと思う。

この記事の目次

スクエニ起死回生の一作

レビューに移る前に、なぜ俺がFF16をここまで不安視していたのかという話をしておきたいのだが、全ての原因は前作「FINAL FANTASY XV」(FF15)にある。

FF15はゲーム内容とDLCの売り方、大口を叩いたプロモーションも含めて大炎上。終いには脚本家や発売に至る経緯までもが叩かれてしまい、結果としてFFシリーズのブランドを地の底まで落とす事となった。

当時の俺は予約してまで購入したのだが、その中途半端なゲーム性とストーリーにがっくり肩を落としたのをよく覚えている。料理のグラフィックが綺麗になったところで誰も喜びはしないのだ。

そんなこんなで発売されたFF16はスクエニにしてみればシリーズの復権をかけた土俵際の一作というわけだ。これを外せばFFブランドは完全に失墜することになるため、当然気合が入ってないわけがない。

PS5独占の大本命ソフトとして注目を寄せられていた一方で、前作の悪評が尾を引いて発売前からその内容を不安視する声も上がっていたが、スクエニは見事その期待に応え俺たちの不安を払拭してくれた。

ゲームプレイ

良かったところ
  • 美麗すぎるグラフィック
  • 徹底的に簡略化された設計
良くなかったところ
  • やり込み要素が皆無
  • エリア制は英断だが大都市に行けない

美麗すぎるグラフィック

木漏れ日の明暗差や緑の深さの表現力がすさまじい。息づく森の立体感をひしひしと感じる。

岩肌の陰影、遠くに浮かぶ雲と空の高さ、夕焼け空と風になびく草、そのどれも表現力が圧倒的。

色遣いが非常に繊細でゲームっぽさを全く感じない。圧巻の一言。

息を呑むとはまさにこの事で、これは本当にゲームかと思ってしまう出来栄えだ。

徹底的に簡略化された設計

本作のセールスポイントはストーリーとアクションに集約されており、それ以外のあらゆる要素は徹底的に簡略化されている。

アイテムの回収も自動

回復アイテムはその辺に落ちているし回収も自動だからアイテムの枯渇に苦しむことは無いし、持ちきれない分は勝手に使用してくれるから体力の管理もそこまで気を使わなくていい。

武器の作成、強化に必要な素材もマップを歩いていれば大抵勝手に集まっているし、モンスターの素材も対象モンスターが必ずドロップする

ステータスも超簡略化

クライヴ自身のステータスも

  • HP
  • 攻撃力
  • 防御力
  • ウィル

の4つのみ。ステータス振りとかも特になく、基本的にストーリーの進行に合わせて新しい武器装備を購入、強化していくだけで強くなれる。

先ほど話したように強化に必要な素材も勝手に集まっていることが大半なのでとにかく楽。プレイヤーは純粋にストーリーとアクションに没頭できる仕組みになっている。

やり込み要素は皆無

しかしその一方で、ゲームとして重要な遊びが薄くなってしまっているのも事実。ミニゲームや収集要素も無いのは悲しいところ。

クリア時のステータスを引き継いで2周目を高難易度モードで遊べるとはいえ「やり込み」という点ではかなり薄味。裏ダンジョンのような2周目ならではの要素もこれといって用意されていないため一周遊べば満足できてしまう。

強いて言えばクリア済みのストーリーを再度プレイしてバトルのスコアを競うアーケードモードがあるが、特に景品もなく世界中のユーザーとスコアを競うだけなのでプレイヤーのモチベーションが試されるところ。

エリア制は英断だが…

今作ではオープンワールドは廃止された代わりに広めのマップが4つ用意されており、その中でロードを挟まないシームレスなゲームプレイが展開される。

中途半端なオープンワールドはゴミだということは昨今さまざまなゲームで実証されているので、今作はあくまでもストーリーとアクションに注力して、あれこれ手を出さなかったのは正解だったと思う。

各エリアに探索要素は全く無いが、開発が力を入れたいものがハッキリしているのならこれは全然許せる範囲だ。

大都市に行けない

しかしながら各エリアを構成するのは草原、砂漠、山岳、湿地とそれらを繋ぐ小規模な街が点在するのみで、いわゆる首都のような大都市に自由に行くことはできない。

本作には全部で7つの国が登場し、それぞれの国ごとに宗教や文化、建築の様式も異なるため、本来であれば様々なロケーションを体験できるはずだったのだが、その機会は訪れなかった。

一応メインストーリーで行く機会はあるのだが全て戦闘状態かつ一本道。設定上、主人公が革命軍のリーダーで世間的には罪人という立場のため仕方ないと思えなくもないが、イベントでしか訪れることができないのが残念でならない。

それぞれのエリアに探索する楽しみを用意していないのであれば、せめてこのヴァリスゼアという世界にどっぷり浸かりたかった。

グラは最高級、ゲームとしては薄味

FF16のグラフィックは間違いなくPS5最高峰だ。オープンワールドを廃止しエリア制にして、クリエイターの見せたい景色を見せることに注力したマップデザインも好印象だ。

アイテム収集やステータスも徹底的に簡略化され、ストーリーとアクションに注力したい、プレイヤーにもして欲しいという制作の姿勢が見えているので、何も責める所はない。

ただその一方でやり込み要素と呼べるものが殆どなく、裏ダンジョンとかも特に無いしサブクエストもコンプできるので、1周じっくり遊べばお腹いっぱいという具合。

アーケードモードのスコアを競うためアビリティの組み合わせを色々試して、よりスタイリッシュに立ち回れるように研究するとか、ダメージ効率を突き詰めてタイムアタックに挑むとか、自分で遊びを見つけて楽しめる人にはいいかもしれない。

ただ俺みたいなたまには息抜きしたいとか味変したい人にとっては、バトル一辺倒のゲーム構成だとちょっと物足りなさを感じてしまった。

ストーリー

良かったところ
  • ダークだがFFらしい世界観
  • 非言語の演出が光るムービー
  • アクティブタイムロアが優秀
  • 内容の濃いサブクエスト
良くなかったところ
  • 重いテーマを描ききれていない
  • 重要なところで設定の齟齬が目立つ

ダークだがFFらしい世界観

今作の世界観はシリーズの中でも暗め。剣と魔法のファンタジーではあるものの、そこに盛り込まれた設定が本作の暗さやシリアスさを引き立てている。

今作の舞台である「ヴァリスゼア」の人々は、その生活の殆どがクリスタルによる魔法に依存しているのだが、その魔法によって大地からエーテル(生命の源)が枯れてしまい、草木も生えない不毛の土地である「黒の一帯」と化す環境問題が起きている。

そんななか奴隷である「ベアラー」達は、クリスタルを介さず自身の体内にあるエーテルを消費して魔法を発現することができるため、そのエーテルが尽きる=死ぬまで労働力、もといクリスタルの代わりとなる道具として売買され酷使されている。

黒の一帯の広がりとともに領地を失った国は他国の領地やマザークリスタルを求めて戦争を仕掛けるなど、甚大な環境問題を抱えつつも便利な暮らしを捨てることができず、他国を侵し限りある資源を食い潰し、あまつさえ同じ人であるはずのベアラーの命を消費して成り立っているというかなり歪な世界。

ダークな世界でありながらFFの代名詞である「クリスタル」や「魔法」「召喚獣」といった要素が物語に深く関わっているため、FFらしさを全く失っていない非常に心惹かれる世界観だ。

アクティブタイムロアが優秀

「マザークリスタル」とか「ベアラー」とか「ドミナント」とか、ゲームが始まって5分もしないのにとにかくこの世界の固有名詞が多く登場する。

FF13ほどではないが固有名詞が多いため、通常ならば置いてけぼりを喰らって話についていけないなんて事になりかねないが、今作にはアクティブタイムロアという機能があるから心配無用。

これはゲームプレイ中にタッチパッドを長押しする事で、物語の進行状況に合わせて関連する用語についての情報を参照することができるというもの。これがまた情報の網羅性が高く「あれって何だっけ?」と思ったものは大抵知ることができる。

もしここに表示されていない情報でも隠れ家に戻れば全ての情報にアクセスすることができるし、この世界で起きた全ての事を時系列順や相関図などでおさらいすることもできる。

総じて痒いところに手が届く非常に便利なシステムだ。「パルスのファルシのルシがパージでコクーン」なんて事にはもうならない。

非言語の演出が光るムービー

FF16の世界への没入感を高めているのは、なんと言ってもムービー演出の素晴らしさだ。特に物語のつかみである冒頭は大事なので当然気合が入っている。

多くを語らない映画的な演出はもちろんのこと、ゲームにありがちなわざとらしいセリフ回しや解説が無く、下手にプレイヤーを意識した行動をキャラクターがとらないので没入感を損なわない。

そんな演出に裏打ちされた没入体験の甲斐もあってか、今作はクリア後の喪失感が凄まじく、プレイ中は俺自信ここまで物語に入り込んでいたとは思わなかったけど、エンドロールが流れたとき「あぁ…俺のFF16はもう終わってしまうんだ」と思わずにはいられなかった。

クライヴの瞳に映る炎

激しくぶつかり合う二体の火の召喚獣。

炎に包まれ、場面は焚き火を見つめるクライヴの瞳へと切り替わる。

ここまで一切のセリフは無いが、先ほどの戦いがクライヴの瞳に焼きついた過去の光景である事が示唆されている。

人、ベアラー、ドミナントの違い

「これがある限り疑問を持つな」セリフと共に頬の刻印がアップで映され、この印を持つ者は低い身分の人間である事が分かる。

焚き火を消すために手から魔法で水を出す兵士。

クリスタルから魔法で飲み水を出す兵士。

クリスタルを使わずに魔法でタバコに火をつける女性。しかしこちらには刻印がない。

ここまでの映像からこの世界にはクリスタルを使用して魔法を使う者と、クリスタルを必要とせず魔法が使える者の二種類が存在し、後者には身分の低い者と、国王との会議に出席するような位の高い者がいることが分かる。

人、ベアラー、ドミナントの違いを、言葉で説明をすることなくプレイヤーはムービーを見ているだけで自然に理解できる。

このようにムービーから得られる情報はとても多いため、プレイヤーは自ずとムービーを集中して見るようになり、それが没入感に繋がっているといえる。

内容の濃いサブクエスト

クエスト内容はごく普通、というかむしろ単調。魔物の討伐やお使いといったごく普通の内容なのだが、クエスト中の会話の節々でこの世界が抱える問題について深掘りしてくれる。

ベアラーを遊び感覚で殺す貴族やおもちゃのように扱う少女など、この世界でベアラーがどのように扱われているのかを知ることができたり、クライヴがベアラーの刻印を取り除くに至った経緯や覚悟などを垣間見ることができる。

特に最終盤のサブイベントは濃い。ジルとジョシュアのイベントはもちろん、隠れ家の仲間や各地の協力者達の絡むイベントは必見だ。

正直これらは物語への理解度やゲーム全体の満足度に関わるレベルで重要だと思っているので、メインストーリーに組み込んでほしかった。

重いテーマを描ききれていない

本作のテーマは大きく2つ。奴隷制の廃止とエーテルという有限資源からの脱却のなのだが、ストーリーを通して描かれるのは後者のみで、奴隷であるベアラーの今後について深く描かれることはなかった。

ベアラーは同じ人として生まれながら道具として酷使され、全身の石化に苦しみ最期は灰になって死んでしまう。彼らは生まれてから死ぬまで、およそ人としての扱いを受けられない世界のようだ。

シドはそんな彼らを人として死なせてやりたいという願いから密かにベアラーを保護する活動をしており、その思いに共感したクライヴは「人が人として生きられる世界」を作るために彼の活動に協力することになる。

しかし、そのためにクライヴ達が何かを成し遂げたかと聞かれるとかなり微妙なところ。

「人が人として生きられる世界」とは

というのもストーリーで描写されるクライヴ達の活動は、黒の一帯の拡大を阻止するためにマザークリスタルを破壊していくというもので、ベアラーを救うという点において明確な解決策を見出せていないのだ。

ベアラーを保護するのも大事だけど、それよりも先にマザークリスタルを何とかしないと世界中が黒の一帯に沈んでしまい、誰も生きられなくなる。だからマザークリスタルの破壊が急務だというのは理解できる。

確かにマザークリスタルを破壊することで人々は魔法を使う術が無くなり黒の一帯は止まるだろう。しかしヴァリスゼアのインフラの基盤が魔法である事に変わりはないため、魔法を使えるベアラーの扱いはより一層酷くなる可能性は否めない。

ネタバレ注意

最終的にクライヴはアルテマの作り出した理を破壊し「魔法」の存在しない世界になったことで、人とベアラーの違いは無くなった。

しかしそれは結果論でしかなく、アルテマという存在を認知する前の段階でどのような手段でそれを実現しようとしていたのかがよく分からない。

マザークリスタルを全て破壊した後に訪れる「人が人として生きられる世界」のビジョンが曖昧すぎて、クライヴ達の戦いがどこに行き着くのか、その実現方法がハッキリしていなかった。

イマイチ説得力に欠ける展開

そもそもクライヴ達がマザークリスタルの破壊というテロ行為に及んでいるのは、これが大地のエーテルを吸い上げるせいで黒の一帯が広がっているからなんだけど、その根拠がとても薄い。

黒の一帯の原因がマザークリスタルであるという根拠も、シドが調べたからというあり得ないくらいフワッとしたもの。

クライヴ自身もマザークリスタルは神聖な存在であると認識していたため、初めはシドの仮説には懐疑的だったが「もう一度くらいは、あんたを信じてみよう」とあっさりテロに加担した。

人々の生活の基盤であるクリスタルを取り上げる行為なのだから、クライヴ自身が見て聞いたものから確信を得て行動して欲しかったと思う。

しかもよく分からないことにマザークリスタルの破壊後も黒の一帯は広がり続けている。この時点で既に3つのマザークリスタルを破壊してきているのに黒の一帯はとどまる所を知らないので「本当にシドの仮説は正しかったのか」という疑問が拭えなかった。

クリスタルで魔法を使うことによって黒の一帯が広がるのを目の当たりにするとか、ゲームが進むにつれて各エリアの一部が黒の一帯になっているとか、ゲームプレイに絡めた描写があればプレイヤーもクライヴも納得できたと思う。

重要なところで設定の齟齬が目立つ

世界観は魅力的なんだけどちょいちょい詰めが甘い。プレイ中はあまり気にならないものの、よくよく考えてみると気になる点や、どうしても辻褄の合わない箇所がいくつかある。

ネタバレ注意

エーテルを感知できるドミナント

カンベルでバルナバスに惨敗しジルを攫われた後、意識を取り戻したクライヴ。しかし彼はジルが生きている事を信じており、そんなクライヴを励ますようにジョシュアは言う。

「シヴァのエーテルはまだ途切れていないから」

この発言のせいで全ての辻褄が合わなくなってしまったのだ。

ドミナントは召喚獣のエーテルを感知できるのならば、なぜジョシュアが生きていることにシドもジルもベネディクタもディオンも、誰一人気づけなかったのだろうか。

ベネディクタが死亡した事をフーゴは感知出来なかったのも説明がつかない。かと思えばベネディクタはノルヴァーン砦に侵入したシドを感知していた。

もうわけがわからないよ。

力を吸収されたドミナント

召喚獣を吸収されたドミナントは魔法が使えなくなる。それはノルヴァーン砦でベネディクタが教えてくれた。

しかし物語終盤、クライヴはジルからシヴァを継承するのだが、その後ジルが登場した際には普通に魔法を使って戦っていた。

なんで?

ディオンに至っては力を吸収されたにも関わらず、最終決戦では自らの意思でバハムートに顕現していた。

だからなんでよ

力を吸収された後の顕現はベネディクタやフーゴもやっていたが、あれは理性を失った暴走状態だ。クライヴも「あれは人を捨てる行為」だと念を押していたにも関わらず、その後の戦闘ではハッキリと自我を保ちクライヴ達と連携して戦っていた。

もう本当に理解できない。なぜジルが魔法を使えていたのか。なぜディオンが自我を保ちながら顕現できたのか。その答えは未だ知れない。

粗はあるが魅力的な物語

発売前からストーリーに力を入れていると発言していたので、物語全体を通していくつか気になる点が残ったのは残念だ。クライヴ達がマザークリスタルの破壊に至る根拠が薄かったり、目指している未来の実現方法が曖昧だったりと、暗いテーマと向き合いきれていなかった。

ましてこれだけシビアな世界観で設定の齟齬なんて御法度。特にディオンがバハムートに顕現できたのはご都合主義を感じてしまい、作品の一貫性を損ねてしまっているのが非常に勿体無い。

しかしダークでありながら召喚獣がストーリーの中心に据えられたFFらしい世界観は超魅力的で、過去作のように召喚獣を呼び出すのではなく、その身に宿し力を振るうドミナントという設定は厨二心をくすぐってくる。

また、映像表現も非常に凝っており、それに裏打ちされた没入感はまさに圧倒的。サブクエストによる世界観の深掘りも忘れておらず、アクティブタイムロアによって設定やストーリーが丁寧に解説されており、プレイヤーへの配慮も忘れてない。

総じて出来はものすごく良いが、細かい部分に足をとられて評価を落としてしまっている非常に勿体無い作品と言える。

バトル

良かったところ
  • お手軽スタイリッシュアクション
  • 大迫力の召喚獣バトル
  • 戦闘BGMが最高にかっこいい
  • 最終決戦の演出
良くなかったところ
  • やや単調になりがち

お手軽スタイリッシュアクション

FF16の戦闘はATBやコマンド選択といった伝統的なFFのシステムから外れており、公式曰く「本格アクション」と謳われている。

その名の通りジャスト回避やパリィ、ボタン長押しでのアクションの変化、敵を踏みつけるストンプに空中コンボなど、これまでのFFでは見られなかったアクションに全振りしたゲームシステムとなっている。

なかでも特徴的なのは全8種類の召喚獣をその身に宿し、簡単操作でスタイリッシュな技を繰り出せるのが最大の魅力。予めセットした6種類の技を次々と切り替えて空中で華麗にコンボを決めていくその様はデビルメイクライに近いしいものを感じる。

ボタンをガチャガチャ押しまくるバトルシステムは慣れている人は気持ちよくなれるが、アクション初心者の方には少々敷居が高く感じた。

手厚い初心者救済措置

普段遊ぶのは専らRPGばかりでアクションなんてできる自信ないよ

そんな人も心配いらない。本作はアクションゲームだが、初心者にとても優しい設計になっている。

初心者用のサポートアクセサリを装備する事で、敵の攻撃が当たる直前に時間がスローになるものや勝手に回避してくれるもの。攻撃ボタンを押しているだけでフィートやアビリティを勝手に使ってくれたり、体力が減ったら自動でポーションを使ってくれるものなど、初心者でもそれっぽく気持ちよくなれるシステムが用意されている。

俺も昔はアクションゲームが全然苦手で、デビルメイクライをプレイした事があるんだけどそのアクション性の高さについていけず、スタイリッシュアクションなのに全くスタイリッシュに立ち回れなかった思い出がある。

本格アクションを謳うのはいいが、元来RPGを作ってきたシリーズでいきなりアクションに舵を切るとユーザーがついてこれない可能性があるが、こういった措置がある事でアクションゲームへの敷居が少しでも低くなり、苦手な人でも等しくゲームを楽しむことができるのは素晴らしいことだと思う。

大迫力の召喚獣バトル

本作の大目玉。召喚獣を操作して戦う超巨大スケールの召喚獣合戦だ。その様はさながら「ウルトラマンvs怪獣」「キングコングvsゴジラ」「イェーガーvsKAIJU」といったところか。

召喚獣を操作できる要素はFF零式にもあったが本作の召喚獣合戦はそれとは比べ物にならない。 PS5の映像美も相まってとにかくド派手でスケールがデカく、ダメージは5桁もザラという超次元バトルが開幕する。

特にvsタイタン、vsバハムートは必見。召喚獣の戦いはついに宇宙にまで到達した。召喚獣は超常の存在であり信仰や畏怖の対象とされており、その設定を遺憾無く発揮した最高の演出だ。

戦闘BGMが最高にかっこいい

ゲームにおいて戦闘を盛り上げるBGMは、プレイヤーの感情に訴えかけ戦意高揚させてくれる非常に重要な要素だ。FFシリーズのBGMは平均しても素晴らしいものばかりで、今作も例に漏れず多くのプレイヤーを魅了している。

通常戦闘曲の「Sixteen Bells」FF8を思わせるイントロにはシリーズの遺伝子を感じる。強敵との戦い「No Risk,No Reward」や、ドミナントとの戦い「To Sail Forbidden Sea」も最高にクールだ。所々に通常戦闘曲のアレンジや似たフレーズが取り入れられている為、耳に馴染みやすい。

序盤の山場であるフェニックスとイフリートの戦い「Away」も、仕向けられた運命とはいえ兄弟で殺しあうことになってしまった悲壮が伝わってくる一曲。ゲームとしては初の召喚獣バトルで、フェーズごとに迫力を増す音楽には心奪われてしまった。

受け入れろ 過去を…自分のすべてを
(L3)+(R3)己を受け入れる

Find the Flame

“リミットブレイク”

フェニックスと対をなすもう一人の火のドミナント「イフリート」としての覚醒。

弟の復讐の為だけに生きてきたクライヴが自身の過去を受け入れ、前へ進む決意と共にその炎を身に纏う。

アクセルベタ踏みでどこまでも熱く激しく、ひたすらに突き進んでいく彼の生き様を表した至高の一曲。

最終決戦の演出(ネタバレ注意)

我は絶対であらねばならんのだ!

本作のラスボス、アルテマがリミットブレイク。

「Find the Flame」をアレンジした神曲「All as One」が流れ、創世の神とクライヴの最後の戦いが幕を開ける。クライヴに託されてきた多くの想い。その全てを背負い「人が人として生きられる世界」のために彼は戦う。

アルテマの力の一端である召喚獣を互いに打ち合い、そのことごとくを打ち破るクライヴ。これまで出会ってきた仲間たちがクライヴの名を呼び、彼の力となる演出には胸が熱くなる。

物語の最期を彩る最高のBGMだ。

やや単調になりがち

「お手軽スタイリッシュアクション」と言ったはいいものの、終盤になってくるとそのお手軽さが徒となり非常に単調なものだと感じるようになってくる。

現に俺は中盤を超えたあたりから戦闘が単純作業化してしまい「楽しいし気持ちいいんだけど何か物足りない」という思いが常に付き纏っていた。

属性要素がない

個人的に俺をそう思わせる最大の要因は、本作には属性の概念が存在しないということで、物理や魔法、火属性や氷属性など本来ならあってもおかしくない要素が一切無いため、全ての敵に全ての攻撃が有効なのだ。

これが一般的なアクションゲームなら特に違和感を抱くことはなかっただろうが、このゲームは仮にもFFだ。ステータスは攻撃力と防御力は物理と魔法に分かれていたし、ダメージ吸収といった要素もあったため、炎の敵に炎で攻撃している違和感がどうしても拭えなかった。

三角ボタンでファイアやブリザドを放つことができても今作のステータスは「攻撃力」のみなので、魔法というよりはただの遠距離攻撃として扱われているのも勿体無く感じた。

炎には氷、水には雷、光には闇など相性があってもよかったと思う。

戦闘のパターンが変化しない

アクションゲームに属性の概念なんかあったら、敵ごとに戦い方が固定されて窮屈だろ。

それは確かにそう。現にFF7Rは属性が超大事なシステムで、弱点属性をつかないと一生攻めあぐねるなんてことはザラにあるため、それが窮屈だと感じるという意見も分かる。おそらく開発も、分け隔てなく色んな召喚獣を使ってほしかったんだと思う。

だけど逆に言ってしまえば、属性の要素がないと敵によって戦い方を変える必要がないので、プレイヤーが意識してアビリティを変更しない限り戦い方が全く変化しないのだ。しかも一度自分の中でパターンが固定されてしまうとなかなか抜け出せない。

召喚獣を切り替えて戦うバトルが売りとなっているはずが、結局装備するのはタイタンなど一部のダメージ効率の高いアビリティに固定されがち。

「一見弱いアビリティでもこの敵には刺さる」といった要素も無いため、一番ダメージを稼げるアビリティをひたすら回し続けるだけの戦闘になってしまっているため、変化に乏しくパターン化されやすい。

敷居の低いスタイリッシュアクション

ボタンひとつでスタイリッシュな技を次々と繰り出し、カッコよく立ち回れるのは最高に気持ちがいい。アクションゲーム初心者への救済も忘れていないのも好感が持てる。

巨大スケールで繰り広げられる召喚獣バトルもPS5の性能を余すことなく発揮しており、FF16の目玉である召喚獣合戦はかなり満足度の高い要素となっている。

闘いを彩るBGMたちはどれも魅力的で、特に「Find the Flame」は本作を象徴する一曲。あのシーンはプレイした全ての人の心に焼き付くこと間違いないだろう。

ただ、属性などの要素が簡略化され戦闘システムがシンプルになったことで、立ち回りがパターン化されやすく少々奥深さに欠け、単調に感じてしまうこともしばしば。

とはいえ本作はあくまでもアクションゲームだ。RPGのように戦略を練るタイプのゲームではない。アクションゲームに属性を持ち込むと複雑化するのは目に見えているし、属性の相性などに脳のリソースを割かれ考えることが増えてしまい、アクションの気持ち良さを損なう可能性もある。

炎や氷は外見的なエフェクトに留めておいて、次々と技を繰り出す気持ちよさを重視した「シンプルなアクションゲーム」というのが落とし所だろう。

FFの復権は成った

圧倒的なグラフィックで描かれるダークな世界観は超魅力的だしムービーの演出も凝っている。プレイヤーがストーリーとバトルに集中できるようそれ以外の要素は簡略化されているし、簡単操作で気持ちよくスタイリッシュに戦える戦闘システムも素晴らしい。加えて戦闘やストーリーを盛り上げるBGMも最高にクールだ。

物語の見せ方や脚本にこだわりが見え、とても惹き込まれるゲーム体験だったことに違いはないが、ストーリーに力を入れた作品と銘打っていながら、ストーリーの描写不足や設定の齟齬があったり、ご都合展開を感じてしまう場面があるのは残念だ。

ゲームプレイ、ストーリー、バトル、それぞれの面から本作をレビューしてきたが、総じて完成度が高く非常に満足度の高い作品だったことは間違いない。

間違いなく面白かった。前作で地に落ちたシリーズの名誉は見事に挽回されたと言っていい。売り上げがどうだの叩いてる人もいるけど、そんなものはどうでもいい。いいものはいい、ただそれだけだ。

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