【「テイルズオブザテンペスト」感想】クソだけど嫌いになれない。磨けば光る。

一部からはネガキャンではなく本当の意味でクソゲーの烙印を押されたマザーシップタイトルのひとつ「テイルズオブザテンペスト」

30年続くテイルズオブシリーズの中でその名前を知っている人はどれくらいいるだろうか。

クロスオーバー作品でしかテンペストのキャラクターを知らないという人も多いとは思う。獣になれる主人公のカイウスとヒロインのルビア、その程度の知識…俺もそのうちの一人だった。

今回はその世間からの評価が本当なのか、そしてシリーズファンとしてテンペストはどんなゲームなのか、それを確かめるためにプレイしてみた。

目次

まず結論

思ってたよりおもろいやん

いや…あらかじめハードルが下がりきっていたからそう思うのかもしれないけど、それでも遊んでいて光るものは感じたし、なんならリメイクで化ける可能性の高いゲームだと思った。

というのも本作の問題の多くは全体的なクオリティの低さ、ゲーム設計の粗さ、バランス調整不足に集中しているものの、逆に言えば物語を構成する要素はきちんと面白いからだ。

なので本作は「面白くなれたはずなのに面白くなれなかったゲーム」といえる。

面白くはない、でも嫌いじゃない。

そんなゲーム。

そもそも作りきれていない疑惑

手抜きオープニング

まず目につくのはOPムービー。シリーズの恒例であったアニメ映像はほんの数秒で、それ以外はローポリモデルが棒立ちでカメラが回るか武器を振るだけ。

しかもフィールドを歩いてるシーンにはセーブポイントが映り込んでいる始末。製品版のOPにゲーム内映像をそのまま流用するという発売前のPVかと見紛うレベルのミスを犯している。

ただ…曲はいい。めちゃめちゃいい。これだけは譲れない。

だから死ぬほどもったいない。

ボリューム不足

メインストーリーは何も考えなくても10時間程度で終わってしまうほどに短く、寄り道となる要素も皆無に等しい。

アクションなら分かるがRPGでこれはあまりにも薄味。ちなみに俺は放置した時間込みで11時間だった。

そして中盤以降の展開があまりにも駆け足。

フィールド移動中に突然キャラ同士の大事な会話が始まるし、次の街についたと思えば大事なキャラがバタバタ死んでいくし、黒幕のお出ましかと思えばラストダンジョンと呼べる場所すらなく戦闘に突入する。

で、気づけば終わっていた。ラスボスも秘奥義とか第二形態とかそういった特別さも無いし、倒した後も演出の安さがにじみ出ていて「これで終わり?」感が否めない。

戦闘にグレードという概念もなく、当然2周目の要素もない。

外伝ならまだしもマザーシップで、しかも5000円でこれは流石に…。俺は中古500円だから許せたけど当時のファンはキレてたと思う。

出番のない設定

パーティメンバーの一人であるティルキスだが全く話に絡まない。異国の王子という設定がありながらパーティの清涼剤程度の役割しか与えられておらず、彼の国についても全く語られない。

カイウスは物語の最後に舞台であるアレウーラの西にある別の大陸に旅立つのだが、本来ならそこでも話を展開するつもりだったのではないか…?と、このボリュームでは思わざるを得ない。

全編ボイスなし

メインストーリーは全編通して文字のみでキャラクターの声を聴けるのは戦闘のみ。

PS1なら分かるけど2006年のゲームでこれはあまりにもお粗末。同時期のタイトルはPS2のアビスとレジェンディアでどちらもボイスついてるから余計にそう感じる。

PS2とDSを比べんなよって思うだろうけど、PS1のエターニアの時点でメインシナリオにはちゃんとボイスついてたから逃げ道はない。容量の問題かもしれないけどRPGとしては寂しい。

ゲームのテンポが悪すぎる

最も恐ろしいのは、そのプレイ時間のほとんどがワールドマップの移動という点だ。

やたら広いマップ、遅い移動速度、エンカウント率の高さ。ダンジョンも同じような景色が続くので迷いやすく行き止まりも多い。

これらが悪魔合体した結果、内容が薄いのにプレイ時間だけが伸びていくという、非常にストレスフルかつゲームとして致命的な問題が発生している。

欠陥まみれの戦闘システム

本作の戦闘システムは正直褒めるところがない。何も楽しくない。本当に楽しくない。ただただ楽しくない。

問題点は以下

  • 改悪された3ライン
  • 装備できる技は仲間も4つ
  • 戦闘中の術技、装備の変更不可
  • 術技のバランスが破綻してる
  • まともに機能しないAI

改悪された3ライン

片やスルメゲー、片や難解過ぎると評されるテイルズオブリバースの3ラインシステムを3D化&簡略化した「3on3リニアモーションバトルシステム」

難解にさせていた原因であるフォルスゲージとラッシュゲージを取り払い伝統的なTP制に変更され、左右に加えて上下への攻撃が可能になった。

これによって難解さは解消されシンプルになったのものの、どこに位置取ろうと必ず二方向から攻撃を受けるようになってしまったため、集団戦では敵に囲まれてタコ殴りにされやすく、技の連携中に横槍を入れられてコンボを止められたりと非常にストレスが溜まる。

ぶっちゃけボスとの一対一のほうが楽で、雑魚の集団の方が強いというのが実情である。

装備できる技は仲間も4つ

これに関してはテイルズオブリバースも同じく4つだったが、あちらはフォルスゲージのシステムと絡み合って独自の戦闘システムとして成立していた。

しかしテンペストは違う。この制限には何の意味もないし、なんなら味方も4つしか技が使えないし説明もされない。

「なんでこいつピンチなのに回復してくれないんだ?」という疑問が生じて、まさかと思ってようやく発覚したほどには不親切。

戦闘中の術技、装備の変更不可

しかも致命的なことに戦闘中に装備はおろか術技すら変更できない。PS1ですらできていたことができないうんこ仕様。

そもそもこれは仕様なのだろうか?技術的な問題?

そんなわけで冗談抜きで本作における術士は完全な回復係となる。

  • 単体回復
  • 全体回復
  • 状態異常回復
  • バフ

これに隊列ボーナスのTP回復を掛け合わせれば、毎秒TPが回復する回復係の完成。攻撃魔法なんてこのゲームにおいてクソの役にも立たない。

術技のバランスが破綻してる

技のTP消費がやたら多く燃費が悪いため序盤は一瞬で枯れる。特技が約15で派生する奥義は約30、その割にダメージはしょっぱい。

そんなわけで通常攻撃メインで立ち回っているとあることに気づくんだけど、このゲームなんと通常攻撃だけでハメられてしまう

そのため術技の存在価値は限りなく薄く、大抵の場合ボスであろうとAボタン連打していれば倒せてしまう。獣人化した場合はさらに顕著で、冗談抜きでボタン連打で完封可能。

さらにカイウスがLv29で習得するお馴染みの防御技「粋護陣」は、今作では攻撃判定も持ち合わせており後隙もほぼないうえ消費TPも12と燃費もいい。

おまけに上下左右に攻撃判定があるため他の特技や奥義の出る幕などあるわけもなく、序盤から終盤まではA連打、粋護陣を習得すればB連打するゲームになってしまう。

中盤あたりで連打ゲーであることを悟った俺は、以降ボス戦以外は全員オートにして戦闘を眺めていた。

まともに機能しないAI

オートで戦闘を眺めていると気づくが、敵味方ともに頭が悪すぎる。断言できるのは、このゲームにおいて戦闘で負ける原因はプレイヤースキルでも敵の強さでもなく味方術士の頭の悪さだ。

TPが100以上余っているのになぜか回復をせず後衛で棒立ち。眼前で味方が石化しているのに棒立ち。ピンチなのにバフを優先する融通の効かなさ。前衛にやってきては敵を殴りそのまま前衛で詠唱しだすなど、挙げ出したらキリがない。

おまけに仲間への指示出しもできないので、回復すら不確定要素という有様。ほかにも敵味方ともに仲間を避けようとして上下のラインを高速で反復横跳びをしているシュールな光景を割と頻繁に見かける。

もうちょっと…何とかならなかったですかね…?

不親切すぎるUI

ホーリィボトルやダークボトルのエフェクトが無いので効果が持続しているのか切れているのかが視覚的に全く分からない。

セーブポイントに触れてもグラフィックに変化がなく、SEもエフェクトもないので視覚的にも体験的にも寂しい。

メニュー画面のUIは最終的には慣れたけど、本当にテストしたのか疑いたくなるほど使い勝手が非常に悪い。パーティ編成を変更しようとメニュー画面を開いてみると

  • 道具
  • 装備
  • 術技
  • ステータス
  • システム

と並んでいるためパッと見でどこで変更できるのか分からりづらい。

正解は「ステータス→隊列→編成」となるわけだが妙に階層が多いうえ、ステータスの項目にパーティ編成があることを想像しにくい。

装備変更も大変見づらく、これまでのような「各キャラクター毎に装備しているものが一覧で表示されて変更したいものを選択する」というものではなく、

「武器の一覧が表示されて、装備させたいものを選んでから誰に装備させるのかを選択する」というこれまでと真逆かつ回りくどいものとなっている。

二度の延期でこれ

とまあ、ここまで聞いてもらった通り、お世辞にも出来のいいゲームとは言えないのだが、本作は二度の延期を挟んだうえで発売されていることは留意しておくべきだ。

  1. 2005年12月に情報が公開。2006/4/13に発売予定。
  2. 「更なるクオリティアップのため」という名目で6月8日に延期。
  3. 「6月8日までには満足のいくクオリティに達することができないという判断に至った」ため2006年内に延期。
  4. 10月26日に発売。

結果がこれ。一体どこのクオリティを上げていたのだろうか…。

使いづらいUIとか術技の仕様とか、直せるところはたくさんあったと思う。

当時発売を待ち望んだユーザーたちはガッカリどころではなかっただろう。

それでもちゃんとテイルズ

でも、俺はこのゲーム嫌いじゃない。なぜなら物語はちゃんとテイルズしてるから。

本作を構成する要素、例えば出自は同じでも環境が違えば対立してしまう悲しさや被害者であり加害者でもある構造、物事の二面性。各キャラの設定や世界観、場面ごとのシチュエーションは申し分ない。

しかしそれを支える描写が圧倒的に足りていない。

キャラへの愛着、対立の悲しさ、伏線の効き。これらは時間と感情の積み重ねがあってこそ成立するものであって、それはとても10数時間に収まりきるものではない。

ティルキスの故郷であるセンシビアとか、そこからさらに西にある大陸とか、ラスボスがほのめかした世界の真実とか、描けるものや描かなければならないものはまだまだ沢山あった。

冗長なマップ移動による時間のかさ増しではなく意味のある時間を積み重ねていれば、本作の評価は全く違うものになっていただろう。

まとめ

最後にまとめると本作は

材料は揃っていたが料理に失敗してしまった作品

だと言わざるを得ない。

たしかに面白くはないしクソゲーと評されるのも無理はない。主にシステム面で問題点は山積みだし、そういった部分を作り切れなかったことが評価を落とした原因だ。

しかし、根幹であるストーリーを構成する要素や世界観は魅力的なのでリメイクで大化けする可能性はある

DSのシリーズは他にイノセンス、ハーツがあるがどちらもリメイク版が存在するので、昨今のリマスタープロジェクトに乗じて「テイルズオブザテンペストR」が発表される日が来るかもしれない。

というか来てほしい…このまま埋もれさせておくにはあまりにも惜しい。

中古で500円なので気になる人はぜひ手に取ってみてほしい。俺が「面白くないけど、嫌いじゃない」と言った意味がきっと分かるはずだから。

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