【「SCARLET NEXAS」レビュー(ネタバレ)】重ね、結ぶ、絆の緋い糸。厨二全開超能力アクション。

総合評価
( 4 )

「SCARLET NEXAS」は2021/6/21にバンナムから発売されたブレインパンク・アクションRPG。

当時は同時期に発売したテイルズオブアライズの事しか頭になかったので見向きもしなかったのだが、最近PSストアでテイルズとセットで販売されているのを見かけ、気になって体験版をプレイしてみたところ思いのほか感触が良かったので購入した。

というわけで今回は「SCARLET NEXAS」(以降、スカーレットネクサス)をレビューしていく。先に結論を言うとかなり質の高いキャラゲーといったところ。

なぜそう思ったのか、このゲームがどんなものなのか詳しく解説していきたいと思う。

目次

バンナムが贈る完全新作

スカーレットネクサスはバンナムの看板作品であるテイルズオブシリーズを筆頭に、ゴッドイーター、CODE VEINなどに関わったスタッフが総力をあげて作り上げた完全新作。

バンナムの得意分野であるアニメ調のグラフィックで作り上げられたキャラクターとSF要素たっぷりな世界観は流石の一言。テレビアニメも制作されておりしっかり2クール26話。新規IPをガッツリ売り出そうという気合いの入り方が伺える。

「ブレインパンク」とは

本作のジャンルは「ブレインパンク」テイルズオブシリーズほど突飛なジャンル名ではないものの、およそ聞き馴染みのない名前だったため少々戸惑った。テイルズもそうだけどバンナムってこういうのやりがち。

で、プレイした所感としては「サイバーパンク ✕ 超能力」といったところ。

この世界の人々が生まれながらに持つ超感覚「能力」

それを基盤に発達した科学技術によって、人々は脳をネットワークに接続し便利な生活を享受していた。

地球全体を覆う「断絶の帯」から飛来する、人の脳を捕食する「怪異」

通常兵器が一切通じない超常の存在に対して、人類は突出した能力を持つ「超能力者」を集め「怪異討伐軍」を編成し、これに立ち向かう……

と、ざっくりこんな世界観。サイバーパンクと共通する点もあるが、決定的な違いはあくまでも話の中心にあるのは個人の「能力」であってテクノロジーではないから「ブレインパンク」と銘打っているようだ。

ストーリー

ヘビーな展開が続くシリアスな作風

セルルックな外見に似合わずストーリーは意外とヘビー。平気で人は死ぬし実験で人間が怪異にさせられたり、人の脳が原料の薬剤が出てくるし直接的な描写はないものの人の頭部が並べられていたりとショッキングな展開が多い

政府に都合の悪い者の洗脳や記憶の操作、人格の矯正は当たり前に行われており、技術が発展しすぎたゆえの腐敗とそれへの反抗というのはサイバーパンクに通ずるものを感じる。

一見便利で平和そうに見える世界の裏では人の命の重みなど全く感じないほどの陰謀が渦巻いており、主人公達はそれぞれの置かれた立場が原因ですれ違い、仲間同士が対立していくというヘビーな物語が今作の魅力だ。

悲しき悪役

ネタバレ注意

影の主人公「カレン・トラヴァース 」

ラスボスを務めるのは怪伐軍の実力者集団「七剣星(セプテントリオン)」のトップ「カレン・トラヴァース 」

国の行った非道な実験により恋人が怪異となり死んでしまう運命を変えるために、ユイトとカサネの時間跳躍能力「レッドストリングス」を利用して、幾度となく時を巻き戻していた。

つまりプレイヤー達が体験した物語は彼の起こした無数のループのうちの一つに過ぎず、この物語の裏にはいくつもの時間軸が存在しており、その世界で恋人を失うたびにカレンは時間を巻き戻すことで、その世界を丸ごと「なかったこと」にしてきた。

しかし何度ループを繰り返しても恋人を失う運命から逃れることはできず、ついに最後のループである本編にて主人公達に敗北。最期は自分の存在を消すことで全ての因果を断ち切り、恋人が死ぬ運命を回避し本懐を遂げた。

全てを捨ててでも恋人を救いたいというただ一つの思いに殉じた。悪と呼ぶにはあまりにも悲しい理由で戦うことになった哀しき悪役。

彼の過去や内面を描いたDLCが600円+税で販売されている。内容もかなり満足度が高く、彼がユイトとカサネに次ぐ3人目の主人公だったのではないかと思わせてくれる内容だった。

本編の内容が気に入った人は買っても損はない。

サイバーパンクとの差別化は難しい

「ブレインパンク」とは言ったものの表面的な特徴はサイバーパンクとかなり似ている。脳をネットワークに接続するというのも攻殻機動隊の電脳化に似ているし、複数の脳を繋いだ生体コンピュータが登場するのもPSYCHO-PASSのシビュラシステムっぽい。

脳内でメッセージ送ったり会話ができる技術があったり、視覚の検閲、脳のハッキングや洗脳、記憶の操作が可能だったり、無機質なビル群に半透明のビジョンが映し出されていたりと、サイバーパンク作品に通ずる部分がかなり多い。

もちろん実際にプレイしてみれば「脳」に関わる設定が多く見受けられ、超能力ありきの社会構造や管理統制された抑圧的な体制への反抗というパンクの精神が描かれているため「ブレインパンク」というジャンルはあながち間違いではないことは分かる。

サイバーパンクっぽいという事は決して悪いことではないのだが、せっかくジャンルを分けたのにサイバーパンクと似通う部分が多く明確な差別化が出来ていなかったのは残念だった。

滲み出る低予算感

OPアニメが低品質

俺は決して叩きたいわけじゃない、でも言わせてほしい。

OPの作画なんとかならなかったんか…

バンナムのゲームの楽しみって、カッコいいワクワクするOPムービーなんだよ。なぜなら物語の幕開けって一番大事だから。

テイルズのオープニングは毎回見たくなる。昔から品質は高かったけど、制作がufotableになってからは疾走感や躍動感に溢れていてとても見応えがある。エクシリア2、ベルセリアなんて最高にカッコいい。

昔遊んだ初代ゴッドイーターのOPは2024年のいま見ても超ワクワクするし、ゴッドイーター3に関してはアニメーションの品質が高すぎる。

なのに俺スカーレットネクサスのOPは毎回飛ばしてる。曲は超かっこいいのに映像がひとつも印象に残ってない。何よりも全然ワクワクしないから見たいって思えないのが本気で悲しい。

バンナムのスタッフが集結して作り上げた新規作品なんだからもっともっと気合い入れて欲しかったよ。テイルズオブアライズといい最近アニメーションの品質が落ちているのが残念でならない。

それもこれも某鬼退治アニメの影響なのは言うまでもないが…。

安っぽい紙芝居

ストーリーの9割は背景に顔が映るだけの紙芝居。ボイスコミックのようなもので絵に多少の動きはあれど、やはり画面の動きが少ないのでしょぼさが否めない。

会話だけならまだしも戦闘も紙芝居で進む場面もあるので状況が把握しづらいし見応えもない。劇中には一部ムービーを採用しているシーンもあるし、CGのモデリングもかなり出来がいいのにこれは勿体無いと思う。絆エピソードはともかくメインストーリーはちゃんとムービーで作り込んで欲しかった。

二つの視点で展開される物語

本作はユイトとカサネのダブル主人公。ダブルとは名ばかりで9割行動を共にしていた同社のテイルズオブエクシリアとは違い、序盤から中盤はそれぞれの視点で物語が進んでいくため、物語が収束していく終盤以外は1周目と異なる体験ができる。

どちらかをプレイしただけだと明かされない謎や、もうひとりの主人公が裏で何をしていたのかという空白が残るし、それぞれの視点で世界の見え方も変わってくるので周回する楽しさがある。

初見はユイト編がおすすめ

どちらの主人公からプレイするか自由に選べるんだけど、俺はユイト編からプレイする事をお勧めする。というのも、両方プレイしてみてユイト編が表カサネ編が裏という印象を受けたからだ。

ユイト編は自分達の属する国の黒い部分にフォーカスが当てられ、正義と信じてきたものが崩れ落ちるストーリー展開となっている。一方カサネ編では国に対立する勢力、いわば敵側の視点で物語が描かれる。

どちらから進めるも自由だが、初見プレイならユイト編から遊ぶ事を俺はお勧めする。

バトル

多彩な超能力を駆使する全能感

今作の特徴的なシステム「SAS(サス)」

これは簡単に言うと仲間の超能力を借りることができるというもの。発火、放電、瞬間移動など多種多様な能力を使いこなすのは全能感に溢れていてとても楽しいし、それぞれの能力で様々な状況に対応できるので腐る能力がない。

水浸しの敵には電撃を、油まみれの敵には炎を、視界が悪い時や透明な敵には透視を、動きの早い敵には高速化や瞬間移動で一気に近づくなど、超能力を駆使していかに有利にカッコよく立ち回るかがポイントだ。

ストーリーが進むにつれて仲間が増えてくると、使える能力も増えて一気に面白くなってくる。ブレインマップを強化していくと2つのSASを同時に使用できるようになるので、複数の能力を組み合わせて使うのも面白いポイントだ。

カットインとSEが気持ちいい

SASを使用するとメンバーのカットインが入るのだがこの演出が格好いい……。SEやコントローラーの振動も相まってガチャガチャやりたくなる気持ちよさが癖になるし、この演出が全く戦闘の邪魔にならないからすごい。これまでテイルズを作ってきたノウハウがここに活きている。

つまり序盤がキツイ

SASを使いこなすのが楽しいということはつまり、仲間が少ない=SASが少ない序盤はかなり退屈に感じるということ。

アクションの自由度もまだまだ狭く念力ゲージも少ない序盤が一番退屈だと思う。ここを乗り越えられるかどうかでこのゲームの評価は変わるだろう。

仲間の存在を感じるシステム

SAS以外でも助けてくれる仲間たち

仲間の力を借りられるのはSASだけでなく、隙ができた時に攻撃してくれるアサルトビジョンや、確率で攻撃を代わりにガードしてくれるプロテクトビジョンなどもある。

それ以外にもプレイヤーのHPが減った時には回復アイテムを使ってくれたり、戦闘不能になった時に確率で蘇生してくれたりと非常に心強い。SASによる超能力の繋がり以外でも、仲間と一緒に戦っているのをちゃんと感じられるのが素晴らしい。

脳内空間(ブレインフィールド)の手助け

必殺技であるブレインフィールドは圧倒的な力と引き換えに使用者の脳にかなり負担がかかるため、30秒以上使用すると死に至るという制限がある。「もっと攻撃したいけど時間がない」という綱渡りがたまらない。

先ほど脳に負担がかかると言ったように残り15秒、残り5秒になると画面にノイズが走り、このまま続けるのはヤバい…と視覚的に訴えてくるのだが、そんなとき仲間たちがSASのカットインと共にブレインフィールドの負担を肩代わりしてくれるのだ。

メタ的にいえば展開時間が伸びるありがたいシステムだし、キャラゲーとして見ても仲間の存在を感じられるためかなり好印象だった。

対多数の戦闘が圧倒的に不利

戦闘では多数の敵を同時に相手取る場面が多いにも関わらず有利に立ち回る方法が限りなく少ない。ダウンやスタンといった敵を分断する方法がほぼ無いのがストレスを加速させている原因だ。

ダウンを取る方法はマップの特殊オブジェクトをぶつけるか、SAS透視の使用中にジャスト回避攻撃をすること。前者はともかく後者はカサネ編だと終盤まで使用不可なので本当にストレスフル。

遠距離攻撃型の敵や浮遊する敵が複数現れたらもう地獄。周囲の敵が画面外から一斉に攻撃してきて蜂の巣にされるし、高火力長射程のレーザーが画面外から飛んでくるのもザラにある。

車を爆破させたり柱をぶん回したりと複数の敵を巻き込めるオブジェクトもあるけど限られた場面しか存在しないので、あればラッキーくらいの感覚。

こんな具合だから安定して立ち回れるのはアラシの超高速とゲンマの硬質化くらいしかない。

回避で攻撃をキャンセルできない

これこそが一対多数の戦闘をストレスマッハにしている元凶。こちらの攻撃中に敵の攻撃モーションを確認しても攻撃をキャンセルできないから回避することができない。

飛行型の敵に対空攻撃していたら周りの敵が射撃してきたけど、攻撃中だから避けられないという状況が頻発する。

ジャスト回避が難しい

このゲームの回避には無敵時間がない。実際はあるのかもしれないけどあるように見えない。それくらい失敗する。二周クリアしたけど回避判定がどうなっているのか未だに理解していない。

モンハンのフレーム回避とかダークソウルのローリングとか、回避の無敵判定を活かして敵の攻撃に飛び込んで〜…っていうのじゃなくて本当にただのサイドステップなので、あれと同じ感覚でいるとボコボコにされる。

そのうえユイト編で敵の外殻を破壊するにはツグミの透視でジャスト回避攻撃くらいしか方法がないからめちゃめちゃ苦戦する。俺が下手なだけかもしれない、そうだったらごめん。

キャラクター

怪異のデザインがキモい(褒めてる)

今作のクリーチャーは人の脳を喰らう「怪異」

生物と無機物が合体したようなその姿は、見ている者に言い知れぬ不快感を抱かせ、超常の化け物である事をまざまざと見せつけてくる。

人体の一部を残したその姿は怪異が元は人間だった事を暗示しており、人をこのような怪物に変えてしまう不気味さや得体の知れなさが魅力だ。

怪異が人の脳を捕食する理由が謎

怪異は人間以外の生物には一切目もくれず脳を捕食するのだが、その理由については最後まで語られることはなかった。

カサネ編では怪異と化した人間は人の脳が原料の薬剤によって人格を取り戻し、会話も可能になるという描写があった。この事から怪異は人の脳を捕食することによって知性を獲得するのではないかという憶測が自然と生まれるのだが、特に触れられることもなく物語は終わる。

怪異はなぜ人の脳だけを捕食するのか。ブレインパンクというジャンルにちなんで脳にまつわる設定にしたのかは分からないが、そこに何かしらの理由付けは欲しかった。

アニメらしい魅力溢れるキャラクター

本作のキャラデザインはとてもいい。光るケーブルと黒装束に身を包んだ特殊部隊というデザインは全国の男の子の厨二心をくすぐる。

一方でキャラ設定は良くも悪くもありきたり。主人公の事が好きな幼馴染、鈍感難聴主人公、あからさまに怪しい軽薄な男、プライドの高いツンデレなど所謂テンプレというやつで意外性はない。

だがそれはアニメ的な視点でいくとある意味様式美みたいなもの。FFみたいなフォトリアルでこれをやられたら流石にキツイけど、アニメ調のゲームだし俺は特に気にならなかった。

個人的にはハナビ、アラシ、シデンがお気に入り。

ハナビは衣装がかわいい。幼馴染ポジションはあまり好きじゃないけど、指パッチンで爆発を起こせるのがかっこいい。

アラシはあの見た目で古参というギャップがある。軍の広報としてアイドルスマイルを振り撒く裏で無気力なサボり魔になっているのも魅力。

シデンは外見通りかなりキツい性格をしているが、それと同じだけ弱さも抱えている脆いキャラクター。話が進むにつれて態度が軟化してくると可愛く見えてくる。二面性があるキャラクターは嫌いじゃない。

内面を知れる絆エピソード

本編の合間に挟まれるスタンバイフェイズにて挟まれるショートストーリー。やるもやらないも自由だが、主人公とそれぞれのキャラクターのやり取りを垣間見ることができるし内容も結構濃くて満足度が高い。

それぞれのキャラクターが抱えている悩みや過去を通してこの世界が抱えている社会問題についても深掘りされるため、絆エピソードをやるかやらないかで物語への理解度やキャラクターへの印象がだいぶ変わる。

各キャラクターのエピソード内容もユイト編とカサネ編で違うため、片方からの視点では見えなかった魅力も発見できるだろう。例えばユイト編から見たシデンは印象最悪だがカサネ編から見るシデンの印象はだいぶ異なる。多分彼は最初と最後で一番印象の変わったキャラクター。俺は結構好き。

外見と実年齢のギャップが魅力

怪伐軍に所属する者は脳の老化によって超能力が弱まるのを防ぐために「矮化材」によって身体の成長を抑制している。

新入隊員であるユイトやハナビなどは年齢=外見ではあるが、ベテランや中堅は実年齢と外見に大きく差が出ている者が多い。

https://twitter.com/snx_anime/statuses/1434457779427688451?s=46&t=au_D4rZbr-X-MENWBaih3Q

メンバーの中でも割と幼い外見のアラシが入隊したのは16歳、軍歴は29年なので実年齢は45歳

彼女と同期のキョウカも同じくらいと考えていいだろう。

ゲンマの軍歴は38年。入隊した年齢がアラシと同じだと仮定してもゲンマは54歳

外見が10歳程度のルカの軍歴は22年。そのまま考えれば実年齢は32歳程度だろうか。

主人公のカサネは新入隊員だが、彼女の母がトゲツから亡命した後に生まれたユイトの兄が25歳であることから彼女の実年齢がそれ以上なのは確実。3歳程度で母と離れたとすると実年齢は28歳程度。

こういったファンタジーでは明らかな子供だけど年齢は上だったり、ショタやロリだけどやたら強くて大人びたキャラクターがいたり、世界の命運を分ける戦いに10代の少年少女が赴いたりというのはよくある話。

ファンタジーとしては当たり前だけどよくよく考えると違和感バリバリのシチュエーションだが「矮化剤」の設定によってきちんと理由づけがされているのが面白いポイントだった。

実年齢と精神年齢の乖離

カサネや軍歴の長いベテラン組は外見は若くても立ち振る舞いは落ち着いており、達観している面もあるので内面的には大人なのが伝わってくる。しかし問題なのはシデン君

シデンの軍歴は14年、入隊が16歳だと仮定すれば実年齢は30歳。もう立派な大人である。にも関わらず彼の精神年齢はあまりにも幼すぎるのだ。

他人と比べてばかりで少しでも自分に欠点を見つければ劣等感を抱き、それを隠すために去勢を張って強がる。うまくいかない自分に苛立ち人形に八つ当たり。ありのままの自分を受け入れられない未熟な自己愛はどう見ても10代のそれで、とても30歳の男とは思えない。

もちろんその裏には幼少期に自身の能力を制御しきれず事故を起こしてしまったというトラウマを抱えている背景があるのだが、いざ設定を見返して彼が30歳である事を知るといい加減自分の中で折り合いつけられる年齢だろ、とは思ってしまう。

矮化剤による成長抑制は精神にまで影響するのだろうか…。外見と実年齢のギャップが生まれる設定は面白いのだが、さすがに言動が幼すぎるのは違和感がある。彼も新入隊員として登場していれば違和感はなかったと思うが。

行動が意味不明を通り越して不気味

物語中盤でカサネはとある理由からユイトを殺害すべく何度か彼を襲撃する。しかしユイトは何故カサネが自分を狙うのか理由を一切知らないし心当たりもない。

つまりユイト達からすればカサネは不意に現れては命を狙ってくる危険極まりない存在でしかないため極力近づきたくはないはず。

それなのにユイトの仲間たちはカサネとの戦いが終わるたび、当たり前のようにカサネとコンタクトをとってくるのだ。

カサネの仲間達もなかなかの狂いっぷりで、カサネと共にユイト達と戦っておきながら戦いが終わった後に完全な私用でユイトを呼び出してくる。

敵対してるのにお茶会すな

ハナビはまだ分かる。大好きなユイトがカサネに本気で殺されかけて、でも友達であるカサネとも戦いたくないからなんとか話し合おうとしてた。でもそれ以外の皆さんは意味不明。

ゲンマはカサネにナオミを守れなかったことの懺悔をする。さっき敵として戦った相手に懺悔?

ツグミはガーデニングの話してるし…どういう神経?

ルカはさっき戦った相手に自分の戦い方のアドバイスを求めるし。

キョウカはユイトを攻撃した事を謝るし…仕方ない状況とはいえ謝るくらいなら最初から攻撃してくるなよ。

カゲロウは敵対してる相手に好みのタイプを聞いたり遊び方を教えてやるとか言ったり。

シデンは個人的な探し物をユイトにお願いしたり、戦い方のアドバイスをしたり。

アラシはユイトにサボりの素晴らしさを熱弁するし。

なんというか、キャラゲーとしてのエピソードと本編のシリアスなストーリーとの温度差がありすぎてまとまりが無いように感じた。

システム

消せない「フォトモード」

さっきから貼っている画像の右下に鎮座しているフォトモード。邪魔。とにかく邪魔。

イベントシーンなら会話中だろうとムービーだろうと、果てはエンディングだろうとエンドロールだろうと必ず右下に鎮座しているから没入感を阻害しまくる。

しかもオプションにも非表示の項目はどこにも無い。こういうのって普段は非表示で何かしらボタンを押したら出てくるもんじゃないの?これが消せないのはバグを疑うレベル。どうしてこれでいいと思った?

究極のお使いサブクエスト

ゴミ

ショートストーリー的な楽しみも一切ないし、依頼を一度請ければ達成報告と報酬の受け取りはメニュー画面からできるので超薄味。

しかも報酬も旨くない。何ならショップで購入、交換できるものばかりなので本当にやる価値がない。およそ令和のゲームでやるレベルじゃない。何のために実装したのか意図がわからない。

荒削りだが非常に良質なJRPG

まるでアニメをそのまま動かしているような体験をさせてくれたのは流石セルルックに強いバンナムといったところ。

キャラ設定はややテンプレではあるもののデザインが魅力的で、サイバーパンク風な世界観も好印象。暗めでシリアスな物語でショッキングな展開もあり、単なる勧善懲悪にならないストーリーには引き込まれるものがあった。

戦闘システムの肝となるSASは、複数の超能力を自在に使いこなすという全能感に溢れており全国の男の子の厨二心をくすぐる事間違いなし。簡単操作でスタイリッシュに立ち回れるのも魅力だった。

その一方で滲み出る低予算感やどう考えても邪魔すぎるフォトモードのゴリ押し。チグハグすぎるキャラクターの行動や水増しとしか思えないサブ要素。そして痒いところに手が届かずストレスしか溜まらない場面が多いなどの理由で評価を下げてしまったのが残念だった。

総じて質の高いJRPGであると言える。俺としてはもし続編が展開されるのなら喜んで購入したいと思えるくらいには面白かった。

セルルックのゲームが好きな人やアクションゲームが好きな人は気に入るだろう。キャラクターや世界観に少しでも惹かれたなら是非手に取ってみる事をお勧めする。

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