【「Bloodborne」レビュー(ネタバレ)】抜群の世界観と血に酔う極上の死闘。
2015年3月26日、フロムソフトウェア×ソニーからBloodborneが発売された。
フロムソフトウェアといえばDARK SOULSなどの高難易度アクションゲームに定評のある会社だ。
過去にPS3でDARK SOULSをプレイした経験があるけど、そのあまりの難易度の高さに心をへし折られて序盤で諦めてしまった経験がある。
今回改めて高難易度アクションへの挑戦するべく意を決してPSstoreを開いたところ、DLC込みの完全版が半額以下の1755円で販売されていたこともあり即購入。もうあの頃とは違う。俺は決意を新たにコントローラーを握った。
ということで合計40時間プレイしたBloodborneをレビューしていく。
雰囲気抜群の世界観
Bloodborneの世界観はDARK SOULSのような中世の甲冑騎士やドラゴンが出てくるようなファンタジーではなく、19世紀のイギリス、ヴィクトリア時代をモチーフとしたゴシックホラーだ。
舞台である古都ヤーナムは人が獣と化す獣の病が蔓延していて、街の中には凶悪な獣やグロテスクな人外の化け物、化け物みたいな人間、果ては「上位者」と呼ばれる異星人もおり、そこに平穏という言葉はどこにもない。
近代的な作風と見せかけて実際はSFやコズミックホラーといった要素が絶妙に融合しており、何とも言えない独特の雰囲気を醸し出している。
結果Bloodborneの世界は、退廃的で狂気に溢れており恐怖を覚えると同時に、その唯一無二のダークな世界観にどうしようもなく惹かれてしまう。
心をくすぐる仕掛け武器
ここまで世界観が作り込まれているゲームは、当然登場する武器も作り込まれている。狩人の用いる仕掛け武器はノコギリ、剣、斧、ハンマーなどバラエティに富んでいて、どれもデザインが秀逸。
そしてこの武器はL1ボタンを押す事で全く性質の異なる武器に変形する。杖と鞭、剣と槌、剣と鎌。プレイヤーはこの2つの性質を使い分けて狩りを全うしていくことになる。
その変形モーションも武器によって様々で、意味もなく変形させたくなる気持ちよさがあり、ガチャガチャと音を立てながら姿を変える武器に男の子の、特に俺の心は鷲掴みだ。
最適解はノコギリ鉈
はじめに支給される武器のひとつだけど、これが本当に万能でラスボスまでこの武器一本でいけるほど強い。
通常時のモーションは隙が少なくヒットアンドアウェイに最適なうえ、獣へのダメージが増加する。変形後は振りが遅くなるもののリーチが増加し上方向もカバーでき、R2ボタンでの薙ぎ払いも対集団戦では有効な手段になる。
とにかくクセがなくどんな状況でも使いやすい。でもゲーム内にはいろんな武器があるから、きっと使ってみたい武器が他にも出てくると思う。
装備制限がある
ただ、DARK SOULSでもそうだったけど武器にはそれぞれ装備するために最低限のステータスが設定されていて、それに満たないと武器を構えることすらできない。
どんなに魅力的で使いたいと思う武器でも、ステータスが足りなくて装備できないというのが、どうしようもなくもどかしい。
序盤から襲いかかるフロムの洗礼
自分の得物を手にしてヤーナムの街に繰り出したプレイヤーを待ち受けるのは、気が触れたヤーナムの住民たちだ。
死体かと思ったらムクっと起き上がる敵、瓦礫の裏からいきなり出てくる敵、曲がり角で待ち構えている敵など初見殺しは当たり前で、居てほしくない場所に必ず敵がいるというプレイヤーの心理を読み切った敵の配置には驚かされる。
通称ヤーナムキャンプファイヤー。ここでは大勢の住民たちが炎を囲っていて、無策で突撃すると四方八方から銃撃され一瞬で殺されてしまうから注意が必要だ。
戦闘の基本は一対一。基本に忠実に一人ずつ誘き寄せて始末していく必要がある。死なないために勝つためにはどう戦えばいいのか直感的に感じ取れるゲームデザインになっていて、説明っぽいチュートリアルが無いからBloodborneの世界への没入感を損なわない設計になっているのが秀逸だった。
防御を捨てたアグレッシブな戦闘
BloodborneがDARK SOULSと大きく異なる点は防御が存在しない事だ。正確には盾はあるんだけど実用性は皆無。それはアイテムの説明欄でも明言されている。
攻撃はステップで避ける必要があるから、常に攻撃に備えて相手の動きをよく見なければならない。狩りには絶え間ない緊張感が伴う。
他にも機動力に関わる装備重量とか怯みやすさに関わる強靭の概念が無くなったから、スピーディーで軽快に動けるようになった代わりに攻撃を受けながらも敵を攻撃するといったゴリ押し戦法が取れなくなった。
だからこそ今作ではちゃんと相手の動きを見極めて攻撃するという基本が大事になってくるけど、上手くいかない時の方が多い。敵の動きを知っていたとしても攻撃を食らう時もある。
攻撃こそが最大の防御
しかしやられたままでは終われない。血を浴びてなお斬り合いをやめない死闘感を演出しているのが「リゲイン」だ。
リゲインは敵からダメージを受けてすぐに反撃すると、減ったHPが少し回復して実質的にダメージを減らせるという仕組み。攻撃こそが最大の防御とはよくいったものだ。
つまりは「死にたくなかったら攻撃しろ」という事。
相反する要素だけどリゲインのおかげで受けたダメージをチャラにできたりする。一見ピンチでもパリィを狙って内臓攻撃が決まれば、減った体力をすべて取り戻すことも可能。こうして絶え間ない攻めの姿勢を貫けるから、この死闘感と緊張感を生み出している要と言える。
回復アイテムが消耗品なのがネック
とはいえ回復をリゲインだけで賄うのは不可能。回復には輸血液というアイテムを使用するんだけど、今作の回復アイテムは消耗品となっている。
DARK SOULSではエスト瓶という回復アイテムがあり、使用するたびに残数が減るけど篝火で休憩したりゲームオーバーになると自動的に回復する仕様だったため、何度負けてもソウル(経験値)を失うだけで、回復アイテムの消耗は特に気にすることでなかった。
しかしBloodborneの輸血液はさっきも言ったように消耗品だから、基本的にはがドロップする物を集める必要がある。慣れてきたら普通にプレイしているだけでそれなりに集まるけど、始めたてのプレイヤーにそれは難しい。
最大所持数こそ20個と多く難易度も低めと思われがちだけど、ゲームに慣れていない段階だとリゲインを狙うのも難しく輸血液に頼ってしまいがち。加えて回復のタイミングを見極められないとダメージを負う事も多く、せっかくの回復も無駄になってしまう事もしばしば。
特にボス戦は負けがかさむとストックが無くなってしまうという事態が頻発する。そうなってしまうと少し前のエリアに戻って、輸血液を集めるために敵を狩り尽くすマラソンをしなければならない。こうなると作業感が強くて飽きが加速してしまい、俺も一度はゲームから離れた時期があった。
でも輸血液が消耗品なのは本作の設定を考えれば頷ける。BloodborneのHPは「生きる力、ないし意思」と定義されていて、輸血液を使用することで「生きる力、その感覚を得る」とある。
つまりゲーム内での死は「生きる力、意思が尽きた」ということ。攻撃を受けてもやり返すことによってHPが回復するのも「不屈の心」「負けない意思」といったところだろうか。
こう考えると、確かに何もないところから勝手に血が湧いてくるのはおかしいし、ヤーナムの獣や住民たちが血の常習者であるなら輸血液をドロップする理由も頷ける。
輸血液が消耗品なのにはきちんとした理由があるけど、やっぱり気軽に死ねないのは死にゲーとしてはストレスが溜まる。
ボスとの戦いが最高に楽しい
そんなBloodborneをプレイしていて最も楽しいのはやっぱりボスとの戦いだ。
数の暴力で押してくる雑魚敵とは違って、その驚異的な攻撃力と予備動作の少ないモーションでプレイヤーの心をへし折ろうとしてくる。
どれだけレベルを上げようと大体3.4発ダメージを受けると死んでしまうため、やはり根本的にはプレイヤーのスキルが追い付いていないと勝てない。
ボス戦で大事なのは死を恐れないこと。死ぬのは当たり前、そうやって敵の動きを覚えて乗り越えていく。
そしてボスのHPが減ってくると行動パターンが変化して緊張感に拍車がかかり、常に「躱すか、死か」「敗北か、勝利か」という2択の連続が続く。
恐ろしい金切声、迫りくるBGM、あと少しのHP、血まみれになりながらやっとの思いでボスを撃破する。その時自分の胸に手を当ててみてほしい、きっと心臓は激しく脈を打って呼吸が浅くなっているだろう。
このえげつない程の緊張感とストレスがスパイスとなって、戦いに勝った時の安心感や達成感をさらに引き立たせてくれる。
そんななかでも、俺が特に好きなボスたちをいくつか紹介したい。
序盤の登竜門「ガスコイン神父」
多くの人が1番目、もしくは2番目に戦うボス。メタ的に言えば対狩人の戦い方実戦で教えてくれる先生ポジションなんだけど、そのスパルタな指導スタイルは多くの初心者に強烈な絶望感を与えてしまった。
初心者狩りという言葉は彼のために存在していると言っても過言ではない。それは撃破トロフィーの取得率を見れば分かる。
なんとその突破率は驚異の44%。最序盤のボスにして約5割強のプレイヤーを引退に追い込んだ悪魔。発売した2015年から現在までの8年間でこの有様。ガスコイン神父がこれまで積み上げてきた屍の数は計り知れない。
俺は運良く初見撃破できたけど、彼に心を折られて引退に追い込まれていた可能性も否めない。
とはいえ彼の動きをよく観察すれば攻撃は結構大振りだから、しっかり見て回避はできるしパリィを狙うことも十分できる。多くの狩人たちはおそらく意思が尽きて一人、また一人と夢から去っていったのだろう。
恐ろしくも美しい獣「教区長エミーリア」
「聖職者こそが最も恐ろしい獣になる」
その設定の通り人間だったエミーリアは目の前で獣になり果てた。
金切り声を上げ鋭い爪で床を切り裂きながらこちらに向かってくるその姿に恐怖を覚えない狩人はいない。そしてその恐怖心を煽るのがこのおぞましく迫り来るBGM。
月光を浴びてその体毛を白く輝かせる姿は神々しくもあり、恐ろしくもある素晴らしいデザインだ。
厄介なことにこいつは回復してくる。その回復量も割と多く運が悪ければ4、5回は回復する。せっかく削ったHPが水の泡になり、輸血液も減り追い込まれるのはこちらばかり。
「こんな奴どうやって勝つんだよ」と誰もが思うだろう。その絶望感はガスコイン神父の比じゃない。
それでも諦めないでよく観察していれば希望は見えてくる。薙ぎ払いなどの攻撃の判定は思っているよりも短いから、タイミングを合わせれば回避は可能。攻撃の後隙に何発撃ちこめるか覚えておくのも有効な対策になる。
何よりも大事なのは焦らないこと。もう少しで倒せるからと強引に倒そうとして、逆にやられてしまってはこちらのメンタルも持たない。少しずつ着実にダメージを与えていこう。
BGM、演出、強さ、100点満点「醜い獣、ルドウイーク」
DLCのボスという事もありとんでもない強さを誇る。
3発で死ねるほどの攻撃力を誇り、この巨体からは想像もできないほどのスピードで襲ってくる。上空からの飛び降りや、予備動作の少ない突進、距離を取っても粘液を飛ばしてくるなど隙が無く、そのモーションは凶悪かつ強力。
そしてHPを半分まで削ったとき獣であった顔半分が隠れ、理性を取り戻し左手に月光剣を携え「聖剣のルドウイーク」として再び襲いかかる。
普通のボスのような行動パターンが変わるとかじゃなく、全く別のボスへと変貌する。つまりはここからまた動きを観察して対策を練らなければならない。
初見は演出と壮大なBGMに圧倒されがち。怖気づいて距離を取るとビームを飛ばしてきたり鬼のようなリーチの突き攻撃をしてくる。
でも剣を振り下ろす際やオーラを纏った振り下ろしなど、威力はえげつないけど予備動作は獣の時より分かりやすい。だから集中力さえ切らさず回避を合わせれば対処は可能。
内臓攻撃でとどめを刺した瞬間の達成感はプレイした人間にしか得られない。まだ味わっていない人にはぜひ挑戦してもらいたい。
難解すぎるストーリー
人が獣と化す”獣の病”が蔓延する古都ヤーナム。血を利用した怪しげな医療が発展したこの街に、病人である主人公は最後の救いを求めて訪れた。その後、醒めない悪夢に囚われてしまった主人公は”獣の病”の原因を突き止めてこの悪夢から目覚めるために戦うことになる。
プレイヤーは狩人となって、こういった化け物を狩りながら、この獣の病の原因を突き止めるために戦うことになる。ざっくりこんな感じのストーリーなんだけど、まあ分からない。プレイした後に「あれは何だったんだ?」と疑問に思ったのはきっと俺だけじゃない。
とにかく途中から何のために戦っているのか分からなくなる。次にどこに行くのかすらまともに説明が無いから、道に迷って道中の敵を狩っているうちに、この戦いの目的すら忘れてしまっていた。
というのも本作を難解たらしめているのは専門用語とその説明の少なさにある。
フレーバーテキストが秀逸
劇中には「医療教会」「メンシス学派」「聖歌隊」といった専門用語が数多く存在し、それがどのような存在、組織なのか解説される機会は多くない。
そんな隙間を埋めてくれるのがアイテムのフレーバーテキスト。多くの人は全く気にしないであろう場所に、物語の謎を紐解くヒントが用意されている。
こうして断片的な情報をアイテムの説明欄からか得て、プレイヤーは謎だらけの世界を少しずつ理解していくという仕掛け。だからBloodborneの世界についての考察はプレイヤーの数だけ存在する。
人の内側に潜む「獣」
とかなんとか偉そうな事言ってるけど、実のところ俺は全く理解できていない。俺がかろうじて掴めたメッセージは「人の内側には誰しも獣が潜んでいる」というものくらい。
よく分からないままとにかく目の前の敵を狩り続けていた俺は、狩りに酔った狩人かそれともただの獣だったのかもしれない。そんなプレイヤーはきっと俺だけじゃないはず。
エンディングは3つ
マルチエンディングではあるものの、そのどれにおいても難解かつ説明がない。間違っても理解ができるなんて思ってはいけない。
ヤーナムの夜明け
悪夢の元凶を狩り終え、主人公はようやくこの悪夢から目覚めることができる。
ゲールマンの介錯を受け悪夢から目覚めた主人公は、おぼつかない足どりで夜明けのヤーナムへと歩いて行った…。
遺志を継ぐ者
ゲールマンの介錯を断り彼を打ち破った後、赤い月から舞い降りた魔物に主人公は取り込まれてしまう。
ゲールマンと同じ車椅子に座る主人公、そして再び獣狩りの夜が始まる…。
ヤーナムの夜明け
月から舞い降りた魔物を倒した主人公。場面は変わりナメクジのような物体を抱えて「狩人様」と呼ぶ人形ちゃん…。
雰囲気を楽しむゲーム
俺は理解することを諦めた
俺は攻略サイトを使った結果ヤーナムの夜明けエンドにたどり着いた。だけどこれはより多くのボスと戦えるルートを選んだ結果だから、ストーリーについては1ミリだって理解できていない。
そもそもの話ブラッドボーンは雰囲気を楽しむゲームだ。ストーリーの解釈は啓蒙の高い人に任せることにする。
何が何だかわからん
俺のようにストーリーが気になる人、分からない人は「上級騎士なるにぃ。」様の動画を見てほしい。
めちゃめちゃ説得力のある素晴らしい考察、啓蒙が高すぎる。俺は思考の次元が低すぎた。
全ての狩人たちへ
圧倒的な強者を倒した時のカタルシスと、絶望を自らの成長で克服する達成感は筆舌に尽くしがたい。ソウルシリーズとの差別化としては、やはり防御を捨てたアグレッシブな血しぶきの飛び交う死闘感だ。これはBloodborneでしか味わうことが出来ない。難解で謎と狂気に満ちた世界も魅力的でプレイヤーの心をつかんで離さない。
そんなBloodborneは一体誰におすすめなのか。
- 死にゲーに初めて触れてみたい人
- 高難度アクションに挑戦したい人
- Bloodborneの世界観に少しでも惹かれた人
- 啓蒙を高めたい人
そんな狩人志願者たちは是非一度手に取ってみてほしい。きっと後悔はしない。
「かねて血を恐れたまえ」
それでは。